TOI-2109 b

TOI-2109 b

TOI-2109 bは、地球から約855光年離れたヘルクレス座の方向に位置する、F型星である恒星TOI-2109の周囲を公転する太陽系外惑星です。木星のような巨大ガス惑星に分類され、特に主星のごく近くを周回する「ホット・ジュピター」と呼ばれるグループに属しています。

発見経緯

この惑星は、広域太陽系外惑星探査衛星TESS（Transiting Exoplanet Survey Satellite）による観測データから見出されました。TESSは、恒星の手前を惑星が通過する際のわずかな明るさの変化（トランジット法）を捉えることで、多数の太陽系外惑星候補を発見しています。TOI-2109 bも、このトランジット観測によってその存在が確認された天体の一つです。

極めて短い公転周期

TOI-2109 bの際立った特徴は、その極端に短い公転周期です。この惑星は、わずか約16時間という驚異的な速さで主星の周囲を一周します。これは、これまでに発見されている木星型惑星の中で、最も短い公転周期の記録を保持しています。この短い周期は、惑星が主星から極めて近い距離にあることを明確に示しています。

物理的特性と灼熱の環境

物理的なサイズとして、TOI-2109 bは木星と比較してかなり大きいことが分かっています。推定される質量は太陽系最大の惑星である木星のおよそ5.02倍、半径は約1.35倍です。

主星TOI-2109への近接と、主星自身が比較的表面温度の高いF型星であることから、TOI-2109 bの表面は極めて高温となっています。その温度は約3600ケルビン（摂氏約3300度）に達すると推定されています。これは、低温の恒星として知られる赤色矮星の表面温度に匹敵するほどの、まさに灼熱の環境です。既知の太陽系外惑星の中で、TOI-2109 bはその表面温度において、最も高温とされるKELT-9bに次いで、2番目に高い値を示しています。

進行する軌道減衰

さらに興味深い観測結果として、TOI-2109 bの軌道には「軌道減衰」と呼ばれる現象が発生していることが明らかになっています。これは、惑星が主星との相互作用によって徐々にエネルギーを失い、主星へと螺旋状に接近していく現象です。

観測によると、TOI-2109 bの公転周期は年間あたり10ミリ秒から最大で750ミリ秒というペースで短縮しています。この減衰速度は、ホット・ジュピターが経験する軌道減衰の中でも比較的速い部類に入ると考えられています。現在の減衰速度が維持されると仮定した場合、TOI-2109 bは今後およそ1000万年という比較的短い天文的時間スケールで、主星TOI-2109に飲み込まれて消滅する運命にあると予測されています。

研究対象としての意義

TOI-2109 bは、その極端な公転周期、超高温の表面、そして進行する軌道減衰といった特異な性質から、太陽系外惑星、特にホット・ジュピターの進化や主星との相互作用に関する理解を深める上で、極めて重要な研究対象となっています。このような極限環境にある惑星の観測データは、惑星形成論や惑星大気物理学の理論モデルを検証し、改良するために役立ちます。その短い公転周期とトランジットを繰り返す性質から、今後も詳細な観測による研究が進められることが期待されます。

もう一度検索