TOI-540 b

概要

TOI-540 b（ティー・オー・アイ・ごーよんまる・ビー）は、地球から見ておよそ45.7光年の距離にある太陽系外惑星です。この惑星は、がか座の領域に位置する赤色矮星TOI-540の軌道を周回しています。TOI-540 bは、そのサイズが地球に比較的近い一方で、主星からの強烈なエネルギーを受けていることが特徴です。

発見と確認

TOI-540 bは、NASAのトランジット系外惑星探索衛星TESS（Transiting Exoplanet Survey Satellite）による観測データの中から発見されました。TESSは、惑星が恒星の手前を通過する際に生じるわずかな光量の低下（トランジット）を捉えることで、惑星候補天体を検出します。TOI-540 bもこの方法によって存在が示唆された天体の一つです。

TESSによる候補の検出後、その惑星としての実態を確認するため、チリにあるセロ・トロロ汎米天文台の望遠鏡を用いた追跡観測が行われました。この追加観測によって、TOI-540 bが確かに惑星であることを確証するに至りました。

惑星TOI-540 bの特性

TOI-540 bの物理的な性質として、その大きさは地球の約0.9倍と推定されており、地球よりもわずかに小さいサイズを持つ岩石惑星である可能性があります。しかし、その環境は地球とは大きく異なります。主星TOI-540からの距離が非常に近いため、TOI-540 bが受け取るエネルギー量は莫大です。

具体的には、TOI-540 bが主星から受ける単位面積あたりのエネルギーは、地球が太陽から受け取るエネルギーの約23.4倍にも達すると計算されています。これは、太陽系において最も太陽に近い惑星である水星が受けるエネルギーの約3.5倍に相当する量です。この激しい放射のため、TOI-540 bの推定表面温度は摂氏338度にも上ります。この高温は、一般的な岩石や金属を融解させるほどの極限的な環境であり、液体の水や既知の生命体が存在できるような環境ではないと考えられています。

主星TOI-540

TOI-540 bが公転する主星TOI-540は、太陽に比べて質量も大きさもはるかに小さい赤色矮星（スペクトル型M型星）です。この恒星は、天体カタログによっては2MASS J05051443-4756154やUCAC4 211-005570といった名称でも参照されます。

TOI-540の質量は太陽の約16%、半径は太陽の約0.19倍という、典型的で小型の赤色矮星の性質を示しています。赤色矮星は宇宙で最も数の多い恒星ですが、その多くは活発な活動を伴うことが知られています。TOI-540も例外ではなく、特にその自転速度は特筆すべき特徴です。

惑星を複数持つことで知られる赤色矮星TRAPPIST-1も比較的速い自転をしていますが、TOI-540はTRAPPIST-1よりもさらに高速で自転していることが判明しています。測定された自転周期は約17.4時間と非常に短く、これは多くの恒星に比べて高速です。恒星の活発な活動（恒星フレアなど）は、周囲の惑星、特に近い軌道を回るTOI-540 bの大気や表面環境に大きな影響を与える可能性があるため、この速い自転は惑星系の力学や進化を理解する上で重要な情報となります。

TOI-540 bは、地球サイズの惑星が主星のごく近くに存在する場合の極端な環境を研究する上で、貴重なケーススタディを提供します。今後の詳細な観測や理論研究によって、この灼熱の惑星の性質や、それを育んだ恒星系の進化の歴史がさらに解き明かされることが期待されます。

もう一度検索