TRAPPIST-1i

TRAPPIST-1i

TRAPPIST-1iは、地球から約39光年の距離にある赤色矮星TRAPPIST-1の周囲を周回している可能性があると提唱されている天体、すなわち太陽系外惑星の候補です。

TRAPPIST-1星系は、極めてコンパクトな惑星系として知られており、これまでにトランジット法などの観測から、恒星のすぐ近くを公転する7つの惑星が発見されていました。これらの惑星は、いずれも地球に近いサイズや質量を持つと推測されており、特にハビタブルゾーン内に位置する惑星も複数存在すると考えられているため、生命の存在可能性という観点からも大きな注目を集めています。

既知の7つの惑星の発見後も、TRAPPIST-1星系の詳細な観測データを用いた分析は続けられました。その過程で、これら7つの惑星の運動や恒星の光度変化に、未発見の天体の影響を示唆する兆候が見出されました。2018年7月27日、これらの分析結果をまとめた論文がプレプリントサーバーであるarXivに投稿され、そこでTRAPPIST-1星系における8番目の惑星、すなわちTRAPPIST-1iの存在可能性が示唆されたのです。

2018年の論文では、観測データに基づいてTRAPPIST-1iの軌道特性が推定されました。それによると、この惑星候補の公転周期は約25.345日、あるいは約28.699日である可能性が指摘されました。これらの値は、当時既に存在が確定していたTRAPPIST-1星系の7つの惑星（TRAPPIST-1b, c, d, e, f, g, h）のいずれの公転周期よりも長いものです。このことは、TRAPPIST-1iがこれら内側の7つの惑星群よりも、主星であるTRAPPIST-1星からさらに離れた、より外側の軌道を公転していることを示唆していました。

TRAPPIST-1星系に関する研究はその後も精力的に行われました。2019年3月15日に公表された別の研究論文では、TRAPPIST-1星系の力学的な安定性や観測データをさらに詳しく分析した結果、この星系には既知の7惑星に加えて、まだ発見されていない未知の惑星が存在する可能性が改めて示されました。この2019年の研究では、最も内側の惑星TRAPPIST-1bよりもさらに内側に一つ、そして最も外側の惑星TRAPPIST-1hよりもさらに外側に、いくつかの候補天体が存在しうる軌道範囲が示されました。

特に、この2019年の論文で示されたTRAPPIST-1hの外側の候補天体の一つは、公転周期が約27.3日、主星からの軌道長半径が約0.07649天文単位であると計算されました。この約27.3日という公転周期は、2018年にTRAPPIST-1iとして予測された公転周期の値（約25.345日または約28.699日）と非常に近い範囲にあります。この類似性は、2019年の独立した研究が、2018年にTRAPPIST-1iとして提唱された候補天体の存在を間接的に裏付ける可能性を示唆するものとして注目されました。

現時点では、TRAPPIST-1iはまだその存在が確定している惑星ではなく、「惑星候補」としての位置づけに留まっています。その存在を最終的に確認するためには、さらなる詳細な観測データの蓄積と精密な分析が必要となります。しかし、TRAPPIST-1星系におけるこれらの研究は、既知の7惑星のみならず、さらに多くの天体が存在しうる可能性を示しており、この特異な惑星系の全体像を理解する上で重要な手がかりを提供しています。

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