TRAPPIST-1h

TRAPPIST-1h

TRAPPIST-1hは、地球から約39.4光年という比較的近い距離に位置するみずがめ座の方向にある太陽系外惑星です。この惑星は、TRAPPIST-1と呼ばれる超低温の赤色矮星の周囲を巡る、既知の7つの惑星から成る惑星系の一員です。

発見

TRAPPIST-1系は、当初ベルギーのTRAPPIST望遠鏡などによって3つの惑星（TRAPPIST-1b, c, d）が発見されていました。その後、より詳細な観測を行うため、2016年9月19日から20日にかけて、NASAのスピッツァー宇宙望遠鏡がTRAPPIST-1を追加で観測しました。この高精度な観測データから、既に知られていた3つに加え、新たに4つの惑星、すなわちTRAPPIST-1e, f, g, そしてTRAPPIST-1hが発見されました。この発見により、TRAPPIST-1系は太陽系外惑星系の中でも特に惑星数の多い、注目すべき系となりました。

特徴

TRAPPIST-1hの物理的な特徴を見ると、その半径は地球の約0.715倍であり、これは地球と火星のちょうど中間にあたるサイズです。質量については、発見当初は不明でしたが、2017年4月に行われた詳細な追跡観測によって、地球のわずか8.6%という非常に軽い惑星であることが判明しました。この大きさから、TRAPPIST-1hは地球と同様に岩石で構成された、地球型惑星である可能性が高いと考えられています。

軌道に関して、TRAPPIST-1hはTRAPPIST-1系の7つの惑星の中で、最も外側を公転しています。しかし、主星であるTRAPPIST-1自体が太陽に比べて非常に小さく暗い恒星であるため、最も外側とはいえ、その軌道は主星からわずか約892万キロメートル（0.0596天文単位）しか離れていません。これは、私たちの太陽系において、太陽から最も近い惑星である水星までの距離（約0.387天文単位）のおよそ5分の1という、非常に近距離です。TRAPPIST-1hは約18.76日かけて主星の周囲を一周します。

TRAPPIST-1系は、内側の6つの惑星が複雑な軌道共鳴を起こしていることで知られています。これは、惑星間の重力が相互に作用し、規則的な周期で接近や離隔を繰り返す現象です。しかし、TRAPPIST-1hは系の中で唯一、他のどの惑星とも明確な軌道共鳴関係にないと考えられています。

液体水の存在の可能性

TRAPPIST-1hの表面温度は、推定で約168ケルビン（マイナス105℃）と計算されており、これは非常に低い温度です。この温度は、TRAPPIST-1の周囲に設定されているハビタブルゾーン（液体の水が存在しうる領域）よりもかなり外側に位置するため、TRAPPIST-1hの表面は厚い氷に覆われている可能性が極めて高いと考えられています。

しかし、まったく液体水が存在しないとは限りません。ある特定の条件下では、氷の下に液体の海が存在するシナリオも理論的に考えられています。その一つが、TRAPPIST-1hの中心核が活動的である場合や、主星であるTRAPPIST-1および内側の惑星群との強い潮汐力によって、惑星内部で大量の熱が発生するケースです。この内部熱が惑星の表層近くまで伝わり、分厚い氷の一部を融解させることが考えられます。さらに、もし融解によって発生した気体中に水素分子（H2）が豊富に含まれているような状況であれば、その水素が大気として働くことで温室効果を生み出し、内部の熱を保持して液体の水が存在しうる環境を維持する可能性も指摘されています。このような内部からの熱源や大気の組成によっては、厳しい環境ながらも液体の水が存在する潜在的な可能性を秘めていると言えるでしょう。TRAPPIST-1hは、その位置と特性から、氷天体としての側面と、特定の条件下での内部活動による水の可能性という両面において、今後の詳細な観測が期待される興味深い太陽系外惑星です。

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