TZ-45短機関銃

イタリア製短機関銃TZ-45：その歴史と技術的特徴

1944年、第二次世界大戦末期のイタリアで開発されたTZ-45短機関銃は、その簡素な設計と量産性を重視した設計思想から、戦乱の渦中における兵器開発の縮図を示す興味深い事例と言えるでしょう。本稿では、TZ-45の開発経緯、技術的特徴、戦後の動向、そして兵器史における位置づけについて詳細に解説します。

開発と設計

TZ-45は、イタリア社会共和国軍のTonon大佐とジャンドーソ社のZorzoli技師の協働により開発されました。型番のTZは両者の頭文字に由来します。同時期に開発された他の短機関銃と比較して、TZ-45は、量産性に優れた設計が期待できる武器として注目されました。

銃全体の製造にはプレス加工が用いられ、溶接によって各パーツが組み立てられています。仕上げは簡素で、材料はコストと量産性を考慮し、銃床から銃身まで金属製です。グリップパネルのみが木製という徹底的なコスト削減が図られています。

機構面では、ベレッタModello 1938Aの箱型弾倉と9mmパラベラム弾を使用するブローバック式を採用。反動軽減のためのコンペンセイターを備え、フルオートとセミオートの切り替えが可能です。安全装置は、射撃モード切替レバーによるボルト固定と、握ると解除されるセーフティーレバーの二重構造となっており、安全性を重視した設計となっています。

独特の形状をしたフロントサイト、固定式のリアサイトも特徴です。折りたたみ式の金属製肩ストックは、携帯性を高める工夫が見られます。しかし、フォアグリップは省略されており、射撃時の保持は弾倉挿入口で行うため、ステンガンと同様に給弾不良が発生する可能性がありました。

戦時中の使用と戦後の動向

約6000丁が1944年から1945年にかけて生産されたTZ-45は、イタリア社会共和国軍と抵抗組織であるパルチザン双方で使用されました。戦後、アメリカ軍とイギリス軍によって回収・研究されたものの、材質の悪さや信頼性の低さから高評価は得られませんでした。

しかし、1950年代に入ると、ビルマ（現ミャンマー）政府がTZ-45に着目します。ネ・ウィン政権下、自国製武器開発を進めていたビルマは、イタリア人技師の協力を得てTZ-45を改良。その結果生まれたのが、BA-52です。ラングーンやインヤ湖周辺の工場で量産され、ビルマ陸軍の制式サブマシンガンとして採用されました。

しかし、BA-52もTZ-45の欠点を完全に克服できておらず、材質の悪さや機関部の不具合は残ったまま。兵士からは「ネ・ウィンのステンガン」というあだ名で呼ばれるなど、その信頼性の低さが指摘されています。

1990年代以降、ミャンマー軍はイスラエル製のUZI短機関銃をライセンス生産し、TZ-45系は第一線から退役したと考えられています。

まとめ

TZ-45は、戦時下の制約の中で、大量生産を重視した設計思想が反映された短機関銃です。その簡素な構造と、戦後ビルマでの改良・採用という経緯は、兵器開発における様々な要素が複雑に絡み合う歴史の一端を示しています。TZ-45とBA-52の評価は決して高くなかったものの、その存在は、兵器史における興味深い一例として、後世に語り継がれることでしょう。材質の悪さや信頼性の低さといった問題点は、当時の技術力や生産環境を反映していると言えるでしょう。また、BA-52の失敗は、単なるコピー生産では成功しないという教訓を示唆しています。 TZ-45とその派生型は、兵器開発における様々な要素が複雑に絡み合う歴史の一端を示す貴重な事例です。

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