The Music (日本の雑誌)

月刊誌『The Music』

『The Music』（ザ・ミュージック）は、小学館から刊行されていた月刊の音楽専門誌です。1976年11月に産声を上げ、1979年3月号をもってその歴史に幕を閉じました。短い刊行期間ではありましたが、1970年代後半の日本の音楽シーンにおいて、特に洋楽ファンを中心に親しまれた一冊です。

誌面の特徴

本誌の誌面構成は、当時洋楽雑誌の代表格であったシンコー・ミュージックの『ミュージック・ライフ』と多くの共通点を持っていました。その中心を占めたのは、人気洋楽アーティストたちの美しいカラーグラビアと詳細な紹介記事です。ライブレポート、インタビュー、最新アルバム情報など、海外の音楽情報を熱心な日本のリスナーに届けることを主眼としていました。

しかし、『ミュージック・ライフ』が洋楽に特化していたのに対し、『The Music』は日本のアーティストについても比較的積極的に取り上げていた点が distinctive な特徴として挙げられます。これは、洋楽ファンだけでなく、当時の日本のロックやポップスに関心を持つ読者層にもアピケールしようとする姿勢の表れだったのかもしれません。

1970年代後半の音楽シーン

本誌が刊行された1976年から1979年にかけては、日本の音楽シーンが大きく多様化した時代でした。世界的な音楽潮流が次々と日本に流入し、新たなジャンルがファンを獲得していきました。パンク・ロックの衝撃、洗練されたアダルト・コンテンポラリー・ロック（AOR）の登場、ルーツ・ミュージックとしてのレゲエ、大衆文化を席巻したディスコサウンド、そして当時「無機的サウンド」などとも称された電子音楽（テクノポップ）といった多様な音楽ジャンルが次々と日本に紹介され、新たな音楽ファンを開拓していった時代です。『The Music』は、まさにこうした音楽の変革期をリアルタイムで追いかけた媒体だったと言えます。

誌面を飾ったアーティストたち

このような多様な音楽シーンを背景に、『The Music』の誌面では様々なアーティストが取り上げられました。特に人気が高く、繰り返し登場したのは、日本でも絶大な人気を誇った洋楽アーティストたちです。

オリビア・ニュートン・ジョン
リンダ・ロンシュタット
カーペンターズ
ザ・ランナウェイズ
フリートウッド・マック
ビージーズ
ジャニス・イアン
スージー・クアトロ
ベイ・シティ・ローラーズ
チープ・トリック
キッス
クイーン
ボズ・スキャッグス
イーグルス
ビリー・ジョエル
ケイト・ブッシュ
ブロンディ

アイドル的な人気を誇ったアーティストから、ロック、ポップス、ハードロックまで、幅広いジャンルの洋楽スターが登場しました。当時の日本のリスナーがどのようなアーティストに関心を持っていたのかが窺えます。

一方で、日本のアーティストも比較的多く紹介されました。中でも特筆されるのは、矢野顕子が繰り返し登場したことです。これは本誌編集者の音楽的嗜好が強く反映されていた可能性が考えられます。他にも、当時の人気アーティストが多数取り上げられています。

矢沢永吉
カルメン・マキ
竹内まりや
阿川泰子
Char
* 世良公則&ツイスト

これらのアーティストは、当時の日本のロック、ポップス、ニューミュージックといったシーンを代表する存在であり、本誌が洋楽一辺倒ではなく、国内の音楽シーンにも目を向けていたことを示しています。

短命に終わった背景

わずか2年半という短い刊行期間で休刊となった背景には、当時の音楽雑誌市場における競争の激しさや、特定の読者層への訴求力、あるいは経営的な判断など、複数の要因が考えられます。しかし、短い期間ながらも、『The Music』は1970年代後半の多様な音楽文化を記録し、多くの音楽ファンに情報を提供した媒体として、その名を歴史に刻んでいます。特に、洋楽と邦楽の架け橋となるような視点を持っていた点は、特筆すべきでしょう。当時の熱気あふれる音楽シーンを知る上で、貴重な資料の一つと言えます。

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