ThinkPark

ThinkPark（シンクパーク）

ThinkParkは、東京都品川区大崎2丁目に広がる大規模な再開発エリアを指します。かつて明電舎の大崎工場が存在した跡地を活用して開発され、その中心には超高層オフィスビル「ThinkPark Tower」がそびえています。この地区は大崎副都心の一角を形成し、オフィス、商業施設、ホテル、集合住宅、スポーツ施設など、多岐にわたる機能を備えた複合施設として整備されました。

歴史的背景と再開発の経緯

ThinkParkの建設地である大崎は、かつて明電舎にとって重要な生産拠点でした。1897年（明治30年）に東京・築地周辺で創業した明電舎は、生産能力の向上を目指し、1913年（大正2年）に大崎へ工場を移転しました。以来、この地を拠点に、回転機や変圧器といった幅広い電気機器分野で事業を展開しました。しかし、1955年頃（昭和30年代）に入ると、静岡県沼津市など他の地域にも生産拠点が分散され始め、徐々に大崎工場の相対的な重要性は低下していきました。

転機が訪れたのは1982年（昭和57年）です。東京都の長期計画において、大崎が新宿や渋谷などと並ぶ副都心の一つに指定されたことで、地区内に集積していた中小工場の土地利用が変わり始め、再開発への期待が高まりました。明電舎は、大崎工場の機能を他の拠点へ移転が完了した1985年（昭和60年）に、広大な工場跡地の利用計画に着手しました。

再開発計画の目的は、山手線の駅前にふさわしい、オフィス、商業、住宅、ホテル、フィットネスといった機能を併せ持つ多機能複合エリアとして、この地を再生することでした。この計画は、2002年（平成14年）に「大崎駅西口地区再開発計画」として都市計画が決定され、さらに2004年（平成16年）には東京都によって「都市再生特別地区」として初めて認定されました。品川区が整備した交通広場や公共地下駐輪場なども加わり、大崎駅西口エリア全体の新しい街づくりが進められました。

事業体制とブランディング

再開発を進めるにあたり、明電舎は中心となる超高層ビルの開発を単独で行うのではなく、より専門性の高い不動産開発のパートナーを探すことになりました。その結果、浜松町で世界貿易センタービルを運営する世界貿易センタービルディングとの共同事業として推進することが決定しました。この共同事業では、まず明電舎が道路などの基盤整備を行い、敷地の一部を世界貿易センタービルディングに売却して開発資金を確保しました。そして、再開発の中核となるオフィスタワーは、明電舎と世界貿易センタービルディングの共同で建設され、両社がフロアごとに区分所有する形がとられました。タワーのテナント誘致や日々の管理・運営業務については、不動産管理を本業とする世界貿易センタービルディングが担当することが定められました。

ThinkPark全体のブランディングはシー・アイ・エーが手がけ、「where ideas grow」（アイデアが育つ場所）をコンセプトとして設計されました。このコンセプトに基づき、オフィスエリアはThinkPark Tower、商業エリアはThinkPark Plaza、正面広場はThinkPark Arena、そして緑豊かな空間はThinkPark Forestと、それぞれのエリアに名称が付けられました。エリア全体は2007年（平成19年）10月25日に開業しました。

施設構成

ThinkParkエリアは、多様な機能を備えた複数の施設で構成されています。

ThinkPark Tower

地下2階、地上30階建てのオフィスビルです。2階にはオフィスエントランスホールがあり、大崎駅とは「品川夢さん橋」と呼ばれる歩行者デッキで直接結ばれています。3階から30階がオフィスフロアとなっており、1フロア約3000㎡の広さを持つ、柱がなく広々とした空間が特徴です。これにより、企業が本社機能を一箇所に集約することも可能な、質の高いオフィス環境が実現されています。テナントとして入居する食品関連企業の中には、執務空間に加え、新商品開発のためのテストキッチンなどを設置しているケースもあります。

タワーの外装には、ユニット式のガラス製カーテンウォールが採用されています。ガラスユニットの間の目地には、窓清掃用のゴンドラレールや外気を取り入れるための機能が組み込まれています。低層部の外観は、足元の緑豊かな環境との調和を図り、ガラススクリーンを用いた透明感のあるデザインとなっています。低層部の商業施設は、ガラスカーテンウォールによって有機的な曲線形状が表現されています。また、ガラスファサードの頂部に取り付けられたガラス固定金具にはLED照明が内蔵されており、夜間には建物の稜線が美しく浮かび上がります。

オフィスを構える主な企業例：
明電舎
住友重機械工業
バルカー
ニッセイ・ウェルス生命保険
ABB
ダッソー・システムズ
ドリコム
プーマ ジャパン
ベーリンガーインゲルハイムジャパン
日本ハム東京支社
フューチャー大崎 ThinkPark Tower オフィス
クオラス
ローソン銀行
モスフードサービス

ThinkPark Plaza

タワーの1階から3階に設けられた商業施設エリアです。ここでは、オフィスワーカーだけでなく、近隣住民や大崎を訪れる人々も利用しやすい多様な店舗が営業しています。本社を構えるモスフードサービスは、主力業態の「モスバーガー」に加え、カフェスタイルの「マザーリーフ ティースタイル」や和食を提供する「あえん」など、複数のブランドを展開しています。

大崎メディカルプラザ

タワーの3階にあるクリニックモールです。ここでは、7つの異なる専門分野のクリニック、健康診断センター、および調剤薬局が集まっており、地域住民の健康をサポートする役割を担っています。

ThinkPark Arena

ThinkPark Towerの正面に位置する多目的広場です。イベント開催やフットサルなどのスポーツに利用可能で、地域に根差した賑わいを創出する場として活用されています。

ダイワロイネットホテル東京大崎・スポーツクラブNAS大崎

ThinkPark Towerの西側に明電舎が建設したビルを、大和ハウス工業が賃借し、子会社であるダイワロイヤルが「ダイワロイネットホテル東京大崎」（客室数194室）を、スポーツクラブNASが「スポーツクラブNAS大崎」をそれぞれ運営しています。

ウエストレジデンス大崎

ThinkParkエリアの近接地、居木神社が所有する敷地に建設された集合住宅です。三井物産、新日鉄都市開発（現：新日鉄興和不動産）、総合地所、三洋ホームズ、長谷工コーポレーションの5社が共同で開発・分譲しました。地下1階、地上20階建てで、2008年（平成20年）2月に竣工しました。

環境への配慮

ThinkPark全体は、ThinkPark Forestとして整備された緑豊かな空間に包まれています。また、環境負荷の低減を目指し、エネルギー効率の高い都市ガス利用のガスコジェネレーションシステムや、夜間電力を活用する蓄熱式空調システムなどが導入されています。敷地全体の緑地率が40%と高いため、都心部で問題となりがちなヒートアイランド現象の抑制効果も期待されています。

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