TouchUpWeb

TouchUpWeb（タッチアップウェブ）は、2005年度下期にIPA（情報処理推進機構）のオープンソースソフトウェア活用基盤整備事業に採択され、開発されたソフトウェア、またはそのプロジェクトを指します。このプロジェクトは、特定のブラウザでしか正常に表示されないウェブサイトを、他のブラウザでも閲覧可能にすることを目指しました。しかし、2009年4月7日にサービスを終了しています。

このソフトウェアは、Mozilla Firefox 1.5以降で利用可能な拡張機能として提供されました。この拡張機能をインストールすることで、本来Firefoxでは閲覧できないウェブサイトも、特定のスクリプトを適用することで正常に閲覧できるようになるという仕組みでした。ただし、この仕組みは、各ウェブサイトに合わせて作成されたスクリプトを用いるため、すべてのウェブサイトに対応できるわけではありません。

ソフトウェアの構成は、Firefoxにインストールされた拡張機能が、サーバーから必要なスクリプトを取得するという形になっています。各ソフトウェアはMPL 1.1（Mozilla Public License 1.1）の下で提供されるオープンソースソフトウェアでした。

開発の背景

このプロジェクトが開始された背景には、学校へのLinux導入実験や自治体へのアンケート調査で、Internet Explorerでしか閲覧できないウェブサイトがオープンソース環境導入の障壁となっているという事実がありました。ウェブ標準プロジェクトやもじら組は、ウェブ標準への啓蒙活動を推進していましたが、短期間でこの問題を解決するのは困難でした。そのため、TouchUpWebプロジェクトでは、既存のウェブサイトに動的にスクリプトを適用し、閲覧状況を改善するという応急処置的なアプローチを採用しました。

ただし、このようなアプローチに対しては、「ウェブ標準に準拠しないウェブサイトの作成を助長する可能性がある」という批判も存在します。これについては後述します。

ソフトウェアの構成

TouchUpWebソフトウェアは、大きく分けてMozilla Firefox用拡張機能とサーバーソフトウェアの二つで構成されています。

TouchUpWeb機能拡張

Mozilla Firefox 1.5以降に対応した拡張機能で、Greasemonkeyという別の拡張機能と連携してウェブサイト閲覧状況を改善する機能を提供します。主な機能は以下の通りです。

サイトに適用可能なスクリプトを検索し、ダウンロードする機能
スクリプト情報の表示機能
適用状況のフィードバック機能

なお、サーバーとの通信はユーザー操作によってのみ行われます。

TouchUpWebサーバー

Apache Tomcat 5.5上で動作するWebアプリケーションで、管理システムとWebサービス機能から構成されています。主な機能は以下の通りです。

スクリプト管理機能
配信履歴検索機能
スクリプト配信機能
ユーザーサイトにスレーブサーバーを構成し、マスターサーバーから定期的に情報を受け取る機能
イントラネット用構成が可能

プロジェクトへの批判

このソフトウェアが効果を発揮するのは、主にInternet Explorerでしか閲覧できないウェブサイトを閲覧する場合です。しかし、このアプローチは、「ウェブ標準に準拠しないウェブサイトの作成を助長する可能性がある」という批判を受けました。ウェブ標準に準拠しないウェブサイトを一時的に閲覧可能にする行為が、結果としてそのようなサイトの存在を容認し、ウェブ標準の普及を妨げるという懸念があったためです。

外部リンク

TouchUpWebプロジェクト at the Wayback Machine (archived 2009-02-22)
TouchUpWeb Bugzilla
TouchUpWebプロジェクト(SourceForge.net)
PickUpWeb(非Firefoxユーザ用サービス)

関連記事

CodeZine「不完全なHTMLを動的にタッチアップ」
CodeZine「Firefox拡張機能の基礎を実例で学ぶ」
* スラッシュドットジャパン「特定ブラウザ依存性への挑戦『TouchUpWeb』プロジェクト」

もう一度検索