U・ボート (映画)

映画『U・ボート』 (Das Boot) 解説

『U・ボート』は、ウォルフガング・ペーターゼン監督による1981年公開の西ドイツの戦争映画です。原作はロータル＝ギュンター・ブーフハイムがU-96に同乗取材した経験を基にした小説『Uボート』。第二次世界大戦下、大西洋で活躍したドイツの潜水艦Uボートの艦内を舞台に、極限状態における人間の姿をリアルに描き出しています。

概要

本作は、当初テレビシリーズとして企画されましたが、1981年に映画として公開。1984年にはBBC2で全6話のドラマシリーズとしても放送され、高視聴率を記録しました。1982年のアメリカ公開時には、アカデミー賞6部門にノミネートされるなど、国際的に高い評価を受けました。監督のウォルフガング・ペーターゼンは、本作を機にハリウッドへ進出。

映画制作には4年の歳月と巨額の製作費が投じられ、Uボートの実物大レプリカが建造されました。薄汚れ、髭だらけになっていく乗組員の姿など、リアルな艦内描写が作品の大きな特徴です。出演者は当時無名の俳優が中心でしたが、本作をきっかけに活躍するようになりました。クラウス・ドルディンガーによるテーマ曲も、リミックス版がヨーロッパでヒットしました。

2018年からは続編としてテレビドラマシリーズ『Uボート ザ・シリーズ　深海の狼』が制作されています。

ストーリー

1941年秋、フランスのラ・ロシェル港からU96が出航。連合国護送船団攻撃の任務を受け、大西洋へ向かいます。報道班員のヴェルナー少尉は、Uボートの戦いを記録するため、艦長や古参のクルー、若い水兵たちと共にU96に乗り込みます。北大西洋での孤独な索敵、敵船団への攻撃、敵駆逐艦のソナー音と爆雷の恐怖、そして死に行く敵の姿。疲弊した乗組員たちは、クリスマスまでの帰港を願いますが、母国からの指令はジブラルタル海峡突破という過酷なものでした。スペインで補給を受けたU96は、厳重警戒下のジブラルタル海峡へ挑みます。

主な登場人物

艦長: U96の艦長。歴戦のベテランで、上層部には冷淡。イギリスの愛唱歌をかける一面も。モデルはU96艦長のハインリヒ・レーマン=ヴィレンブロック大尉。
ヴェルナー少尉: Uボートを取材する報道班員。原作者ブーフハイムの体験が投影されたキャラクター。
機関長: 艦長と多くの航海を共にするベテラン。妻を気遣う。
先任士官: メキシコ育ちの青年士官。生真面目な性格。
次席士官: 元銀行員で陽気な冗談好き。ヴェルナーの取材に協力。
クリーヒバウム航海長: 艦長と航海を共にする下士官。クールな性格。
ウルマン: 士官候補生。フランスの花屋の娘と婚約している。
ヨハン: 機関兵曹長。機関室の現場責任者。
ヒンリッヒ兵曹: 聴音・通信担当。衛生兵も兼ねる。
ランプレヒト兵曹長: 水兵をまとめる役。感情豊かな人物。
ピルグリム二等兵曹: 骨折した。
アリオ: 機関兵。短気な性格。
その他の兵士たち: 平均年齢19歳の若い水兵たち。
フィリップ・トムゼン大尉: 歴戦のUボート艦長。

潜水艦U96

本作の主人公艦は、一般に「U96」と呼ばれています。実在のU96は、第二次世界大戦中に多く建造されたVIIC型Uボートの1隻で、ヴィレンブロック大尉が初代艦長を務めました。1943年までに28隻を撃沈破する戦果を挙げ、ヴィレンブロックは潜水戦隊司令へと栄転しました。U96は計11度の作戦行動を生き延びた稀有な例です。

撮影背景

1979年から2年の歳月をかけて制作されました。実物大のセットで艦内シーンを撮影。出演者の疲労が、実際のUボート乗組員の姿を再現することに繋がりました。

音楽

クラウス・ドルディンガーによるテーマ曲は、テクノ風リミックス版がヒットしました。劇中では、赤軍合唱団による「遙かなるティペラリー」も印象的に使用されています。

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