UXP/DS

富士通が独自に開発したオペレーティングシステムの一つに、UXP/DS（ユーエックスピー・ディーエス）があります。このOSは、UNIX System V Release 4を基盤としつつ、富士通独自の拡張が加えられたシステムとして、主に同社のGP7000Dシリーズ（旧称DS/90 7000シリーズ）や一部のGP7000シリーズに搭載されていました。名称の由来は、UXPが「The UNIX Product」を、そしてDSが開発開始時のターゲット機種のモデル名を表しているとされています。

UXP/DSは、その設計において、デバイスドライバをOSのカーネルに直接組み込むという形式を採用していました。これは、システム全体のパフォーマンスや安定性を高めるための一つの特徴と言えます。また、富士通は以前から多様なコンピュータシステムを展開しており、UXP/DSには、同社のミニコン/オフコンOSであるSX/AやSX/Gなどからアプリケーションを移植しやすいように配慮された機能が盛り込まれていました。さらに、当時のUNIX市場で広く普及していたサン・マイクロシステムズ社のSolarisからのアプリケーション移植を支援するため、一部のドライバにはSolarisとの互換性を持たせるための関数が準備されていたことも特筆されます。

その歴史は、1991年9月に始まります。この時、富士通はSPARCプロセッサを搭載したワークステーションおよびサーバであるDS/90 7000シリーズを発表し、その標準OSとしてUXP/DSが登場しました。シリーズの進化に合わせてOSも機能拡張され、特に1995年5月に発表されたDS/90 7000シリーズの最上位機種、7800Eや7900E向けには、複数のプロセッサ間でメモリを分散して共有するNUMA（Non-Uniform Memory Access）方式に対応する拡張が施され、高性能化が進められました。

1998年、富士通のUNIXサーバラインナップは再編され、新しいGP7000シリーズはS、D、Fの三つに分けられました。このうち、UXP/DSは新しいGP7000Dシリーズのオペレーティングシステムとして位置づけられました。一方、Solarisを採用したGP7000Fシリーズが登場し、こちらがその後の富士通製UNIXサーバの主力モデルラインへと発展していくことになります。

OSとしてのUXP/DSは、ユーザビリティの面でも進化を遂げました。1999年には、多くのUNIXワークステーションで標準的に利用されていたCommon Desktop Environment (CDE) の参照プラットフォームの一つにも挙げられており、当時のUNIX環境における主要なデスクトップインターフェースに対応していました。また、社会的な関心が高まっていた西暦2000年問題に対しても、特定のバージョンレベルや修正版数を適用することで対応が図られました。

しかしながら、2000年に富士通がUNIXサーバの次世代ラインであるPRIMEPOWERシリーズを市場に投入した際、利用可能なOSの選択肢はSolarisのみとなり、UXP/DSの新規展開は終了しました。その後、既存のUXP/DS搭載機に対するサポートも段階的に縮小され、2004年4月1日をもってGP7000Dシリーズのサポートが終了したことにより、UXP/DSはその第一線での役割を終えました。

UXP/DSのバージョン管理には、富士通が独自に定めた「VxxLxx」という形式が用いられていました。例えば、DS/90 7000初期モデルではV10L10からV10L20、HyperSPARC搭載機ではV20系、そしてGP7000D UltraSPARC搭載機ではV30系といったように、搭載されるハードウェアモデルによって適用可能なOSバージョンに制限がありました。これは、各モデルのハードウェア特性に最適化されたOSを提供するための措置と考えられます。

富士通はUXP/DSの他にも、メインフレームやスーパーコンピュータ向けのUXP/M、FUJITSU VXシリーズ/VPP300シリーズ向けのUXP/Vなど、様々なUXPファミリーのOSを展開していました。UXP/DSは、これらのファミリーの中で、特にワークステーションやミッドレンジサーバー向けとして位置づけられていたと言えるでしょう。

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