VULGAR

DIR EN GREY|DIR_EN_GREY 『VULGAR』徹底解説

DIR EN GREY|DIR_EN_GREYのメジャー4thアルバム『VULGAR』は、前作『鬼葬』から約1年半を経てリリースされました。本作は「痛み」をテーマに掲げ、バンドにとって重要な転換点となった作品として知られています。

制作背景

アルバム制作期間中、メンバーは様々な困難に直面し、当初はモチベーションが低い状態でした。しかし、徹底的な話し合いを重ねることで、バンドの方向性やライブスタイルを見つめ直し、個々の意識改革にも繋がりました。Toshiyaはベースラインの存在意義を追求し、Shinyaはドラムフレーズの難易度に苦戦するなど、各メンバーが限界に挑戦したことが伺えます。京は、本作の制作を通して「表現者」としての自覚に目覚め、クレジットをVocalからProphetへと変更しました。

初回盤と通常盤

初回盤は特殊パッケージ仕様で、収録曲「OBSCURE」のミュージックビデオDVDが付属していましたが、過激な内容から一部規制が加えられました。オリジナルバージョンは、2005年発売のDVD『AVERAGE PSYCHO』で視聴可能です。歌詞カードは、従来のような「遊び」を廃し、正確な歌詞が掲載されるようになりました。また、英語詞の歌詞も同梱されています。通常盤には、期間限定特設サイトへのアクセスIDが封入され、「VULGAR KIT」と題したグッズや素材を用いたホームページ作成コンテスト、レコーディング風景写真の公開など、様々な企画が展開されました。

楽曲について

アルバム収録曲である「THE IIID EMPIRE」と「INCREASE BLUE」は、後に映画『デス・トランス』の挿入歌として起用されました。また、本作以降、シングル曲は全てアルバムバージョンとして収録されるようになりました。

各楽曲解説

audience KILLER LOOP: 薫と京が持ち寄ったメロディーを組み合わせた楽曲。京自身のトラウマが歌詞に反映されており、ライブやフェスで頻繁に演奏されます。
THE IIID EMPIRE: ToshiyaとDieが制作した原曲に京がメロディーを付けた、戦争をテーマにした楽曲。ライブでの定番曲であり、アンコールのラストを飾ることも多いです。ベストアルバム『VESTIGE OF SCRATCHES』には再構築バージョンが収録されています。
INCREASE BLUE: Shinyaが原型を制作した、パンキッシュで疾走感溢れるナンバー。ギターリフが印象的です。
蝕紅: 童謡「かごめかごめ」をモチーフにした歌詞が特徴的な楽曲。薫が原型を制作しました。ライブでは、中盤のアカペラ部分が披露されます。2009年リリースのシングル「激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇」には、リアレンジ音源が収録されています。
砂上の唄: 京がメロディー、Dieがコード進行を担当したシンプルな歌モノ。
RED…[em]: Dieのギターフレーズから始まる楽曲。Die自身もお気に入りの曲であり、京のリクエストに応えて制作されたギターソロが聴きどころです。
明日無き幸福、呼笑亡き明日: バンド初のシャッフルビートを取り入れた楽曲。
MARMALADE CHAINSAW: ライブ中の自身を表現した楽曲。『時計じかけのオレンジ』からインスピレーションを得た歌詞が特徴です。
かすみ: 12thシングルのアルバムバージョン。ミキシングとドラム録音を新たに実施。
Я TO THE CORE: 1分強の短い時間に展開されるメロコアナンバー。Shinyaが制作した原曲をプリプロダクションで現在の形に仕上げました。
DRAIN AWAY: 11thシングルのアルバムバージョン。シングルよりもクリアな音質で、サビのメロディーが一部変更されています。ドラムも再録音。
NEW AGE CULTURE: パーティー会場のSEが挿入された、ダンサブルなハードコアナンバー。シンセサウンドが特徴的です。
OBSCURE: 本アルバムの核となる楽曲。薫が原曲を制作しました。7弦ギターと5弦ベースが導入されています。ミュージックビデオは、和風エログロな世界観で物議を醸し、英音楽サイトGigwiseの「最も物議を醸したミュージック・ビデオ TOP50」で8位にランクインしました。ライブでも頻繁に演奏される人気曲であり、2011年リリースのシングル「LOTUS」には再構築バージョンが収録されています。
CHILD PREY: 10thシングル。テレビ東京系『ミミヨリーナ』エンディングテーマ。アルバム収録にあたり再レコーディングされ、タイトル表記が変更されました。
* AMBER: アルバムのラストを飾る楽曲。薫のギターエフェクトが効果的に使用されています。京はこの曲の歌詞を「このアルバムで一番攻撃的」と評しています。

『VULGAR』は、DIR EN GREY|DIR_EN_GREYの音楽性を深く掘り下げた、挑戦的な作品と言えるでしょう。

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