W62 (核弾頭)

W62核弾頭：アメリカ大陸間弾道ミサイルの心臓部

W62は、アメリカ合衆国が開発した強力な熱核弾頭です。ローレンス・リバモア国立研究所という、核兵器開発において世界をリードする研究所で誕生しました。その主な用途は、アメリカ空軍が誇る大陸間弾道ミサイル、ミニットマンIIIへの搭載でした。

開発が始まったのは1964年。それから6年後の1970年には生産が開始され、1976年までに実に1725発ものW62が製造されました。これは、アメリカ合衆国の核抑止戦略において、W62が極めて重要な役割を担っていたことを示しています。

W62は、MIRV（多弾頭搭載システム）に対応した弾頭でした。MIRVとは、単一のミサイルから複数の弾頭を異なる標的に同時に発射できる技術です。W62は、Mk.12再突入体という特殊な装置に搭載され、ミニットマンIIIミサイルには最大3基まで搭載可能でした。そのサイズは、直径約50cm、長さ約100cm、重量は約115kgと、想像以上にコンパクトに設計されています。核出力は170kt（キロトン）と、都市を壊滅させるに十分な破壊力を持っていました。さらに、信管には触発と空中爆発の2種類の作動方法が用意されていた点が特徴です。

しかし、軍事技術は常に進化します。1979年からは、W62の一部がより新型のW78核弾頭（Mk.12A再突入体）に更新されるようになりました。これは、W62の後継と言えるでしょう。

それから年月が流れ、W62は老朽化が進行しました。加えて、当時の基準では性能が不足する部分も出てきました。具体的には、低感度爆薬の採用や耐火ピットの欠如といった問題が指摘されています。これらの問題を解決するには、高額な改修が必要不可欠でした。そこでアメリカ軍は、別のミサイルシステムの退役によって余剰となったW87核弾頭（Mk.21再突入体）を活用することにしました。これは、LGM-118Aピースキーパーというミサイルの退役に伴うものでした。

2006年から始まったW87への更新作業は、2010年に完了しました。これにより、長年にわたってアメリカ合衆国の核抑止戦略を支えてきたW62は、ついにその役目を終え、退役しました。W62は、冷戦時代の産物として、その存在感と歴史的意義は計り知れません。その技術的特徴や運用方法、そして最終的な退役まで、W62の生涯は核兵器の歴史を考える上で貴重な資料となっています。

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