WOMBS

WOMBS（ウームズ）

白井弓子による日本のSF漫画作品。

概要

本作は、植民惑星を舞台に、妊娠機能を兵器へと転用した世界で戦う女性兵士たちの物語です。独特な設定と重厚なストーリー展開が特徴で、ミリタリーSF作品として高い評価を得ています。

2010年には第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門の審査委員会推薦作品に選ばれ、2017年には第37回日本SF大賞を受賞しました。また、2020年からは前日譚を描いたスピンオフ作品『WOMBS クレイドル』が連載されています。

作品誕生の背景

作者の白井弓子は、1990年代にテレビで見た妊婦に対するハラスメント的な発言や、友人から聞いた妊娠中のDV体験がきっかけとなり、戦う妊婦のイメージを抱いたと言います。このイメージが年月を経て本作へと結実しました。また、妊娠が批判の対象となる状況に対し、逆に国家の存亡を握る存在として描くという着想も、本作に大きな影響を与えています。作者自身も二児の母であり、出産経験が作品に深く反映されています。

出版の経緯

『WOMBS』は、月刊漫画雑誌『月刊IKKI』で2009年6月号から2012年6月号まで連載されました。その後、描き下ろしによる制作に移行し、単行本は第4集まで刊行されました。しかし、『月刊IKKI』が2014年11月号で休刊することが決定し、『WOMBS』は第5集で完結することになりました。当初、さらに数巻の継続が予定されており、第5集もその前提で制作が進められていましたが、方針転換に伴い大幅な原稿の描き直しが行われ、2016年1月に最終巻である第5集が発売されました。

第5集には、先行してウェブサイト『イキパラ』で公開された第33話と第34話が収録されています。

また、『月刊IKKI』では2011年から『WOMBS』のコーナーとして『特別転送隊レポート』や『碧王星博物誌』などの1ページ漫画や4コマ漫画が掲載され、本編連載終了後も休刊まで続けられました。これらの作品は、後に作者が自費出版した『WOMBS REMNANTS』に収録されています。

あらすじ

舞台は、植民惑星・碧王星。第一次移民と第二次移民の間で20年続く戦争が繰り広げられています。第一次移民の国「ハスト」は、第二次移民の侵攻に抵抗を続けていますが、劣勢を強いられていました。ハスト国軍に徴兵された主人公マナ・オーガは、子宮に現地生物「ニーバス」の組織を移植し、空間転送能力を得た女性兵士「特別転送隊」に配属されます。彼女たちは、国の命運を背負い、戦場へと身を投じていきます。

登場人物

特別転送隊（ハスト）

マナ・オーガ
本作の主人公。ハストの第一次移民の女性で、ブドウ農家の娘だったが、ハスト国軍に徴兵され転送兵となる。
アルメア軍曹
アルメア隊を指揮するベテラン転送兵。転送隊設立当初からのメンバーで、最長の戦闘期間を持つ。
チーフ・ミミ
探索者のチームを率いる、ベテラン転送兵。
サウラ中佐
第一特別転送隊隊長。初めて座標空間を認識し、転送をコントロールした人物。現在は転送能力を持たない。
ドクター・ニコルズ
軍医中佐。特別転送隊の移植培養責任者。以前は産科医だった。
ドクター・ダイヤモンド
心理カウンセラー。転送兵経験者と思われる。

国立生命科学研究所（ハスト）

転送部長
医療研究者であり、特別転送隊の実現に尽力した。
ドクター・ハーマン
ナノマシンによる座標空間へのアクセス技術を開発したが、現在は現場担当に左遷されている。

用語

碧王星（へきおうせい）
本作の舞台となる惑星。第一次移民によってテラフォーミングされた。
月
碧王星の衛星。いびつな形をしており、碧王星の動植物に影響を与えている。
第一次移民（ファースト）
亜光速航行を経て碧王星に入植した人々。
第二次移民（セカンド）
第一次移民より後に碧王星に移住してきた人々。科学技術が進歩している。
ハスト
第一次移民が築いた国の一つ。第二次移民に対して唯一独立を保っている。
碧王連合
第二次移民が設立した国家。
汎人類協会中立ステーション
碧王星の大気圏外にある宇宙ステーション。
ニーバス
碧王星の原生生物。妊娠した雌が空間転送能力を持つ。ハストでは情報が制限されている。
転送兵
子宮にニーバスの組織を移植し、空間転送能力を得た女性兵士。
座標空間
人間が認識できる空間と重なるように存在する別空間。転送器官を通してアクセス可能となる。
探索者
座標空間で未知の転送ポイントを見つける転送兵。
特別転送隊
転送兵により編成されたハスト軍の部隊。初期は使い捨ての兵器だった。
特別降下隊
特別転送隊によって戦場へ送られる戦闘部隊。

日本SF大賞受賞

『WOMBS』は、2017年に第37回日本SF大賞を受賞しました。前年の受賞者である森岡浩之氏が、次回の受賞候補として本作を挙げたことが話題になりました。贈賞式では、森岡浩之氏から作者にトロフィーが贈られました。

WOMBS クレイドル

『WOMBS クレイドル』は、『WOMBS』の前日譚となるスピンオフ作品です。サウラやアルメアたちが、使い捨ての兵器から正規軍人として転送隊を結成するまでの戦いが描かれています。

2020年8月から2021年9月までwebアクションで連載され、単行本が上下巻で刊行されています。

書誌情報

商業出版

白井弓子 『WOMBS』 小学館〈IKKI COMIX〉、全5巻
『WOMBS CRADLE』双葉社〈アクションコミックス〉、全2巻

自費出版

WOMBS番外編 Dr.ダイヤモンドの1500、2014年
WOMBS REMNANTS、2016年

外部リンク

WOMBS - 小学館コミック
* WOMBSクレイドル 第1話 ビナード先生 - webアクション

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