WORLD LIVE '88

『WORLD LIVE '88』と『JOIA CASIOPEA WORLD TOUR』

日本のフュージョンシーンを代表するバンド、カシオペアは、結成以来その高い演奏技術と洗練されたサウンドで国内外のファンを魅了してきました。特に1980年代後半にはワールドツアーを積極的に展開し、国際的な評価を不動のものとしました。その活動の頂点の一つとして記録されているのが、1988年の世界ツアーの成果を収めたライブアルバム『WORLD LIVE '88』と、同ツアーの模様を捉えた映像作品『JOIA CASIOPEA WORLD TOUR』です。

ライブアルバム『WORLD LIVE '88』

『WORLD LIVE '88』は、カシオペアにとって通算19枚目のアルバムとして発表されました。この作品には、ブラジル、オーストラリア、アメリカ、メキシコ、日本といった各地で行われたライブの音源が収録されています。当時のレギュラーメンバーである野呂一生（エレクトリックギター）、向谷実（キーボード）、櫻井哲夫（ベース）、神保彰（ドラム）に加え、ゲストミュージシャンとしてホーンセクションが参加している点が大きな特徴です。

ゲスト参加したホーンセクションは二つのグループで構成されていました。一つは「ホーン・スペクトラム」で、これはかつて人気を博したバンド「スペクトラム」のホーン隊（新田一郎、兼崎順一、吉田俊之）がバンド解散後も活動を続けていたものです。もう一つは「トップス・ホーンズ」で、バンド「TOPS」のホーンセクションを中心に編成されたメンバー（寺内茂、川嵜淳一、工藤隆、黒石正博）です。これらのパワフルなホーンサウンドが、カシオペアのインストゥルメンタルサウンドに新たな彩りを加えています。

アルバムは当初LPでリリースされ、その後CDでも登場しましたが、CDの一部規格（H33P-20285）にはボーナス・トラックが含まれていないなど、時期やフォーマットによって収録曲に差異が見られます。制作にはプロデューサーの野呂一生氏をはじめ、ツアーの各地で録音を担当したブラジル、オーストラリア、アメリカ、メキシコ、日本の多国籍なエンジニア陣、ミキシングエンジニア、さらにはアートディレクションやデザイン、写真、ヘアメイクなど、多岐にわたる専門家が関わっており、ワールドツアーという大規模プロジェクトを音源として結実させるための体制がうかがえます。

ライブ映像作品『JOIA CASIOPEA WORLD TOUR』

アルバムと同じワールドツアーの興奮を視覚的に記録したのが、ライブビデオ『JOIA CASIOPEA WORLD TOUR』です。この作品は1989年1月25日にレーザーディスク（LD）として初めてリリースされました。アルバムと同様に、カシオペアの4人に加えて、ホーン・スペクトラムおよびトップス・ホーンズといった強力なゲストホーン隊が参加したステージパフォーマンスが収められています。

特筆すべき点として、このLDには解説書が付属しており、カシオペアのメンバー4人と、映像制作に携わった後藤俊介氏がそれぞれのツアーでの思い出を語る文章が掲載されていました。これにより、単なるライブ映像に留まらず、当時のバンドの心境やツアーの舞台裏に触れることができる資料的価値も備えています。

後にこの映像作品は、『LIVE HISTORY PartII』というタイトルでDVDとして改めてリリースされ、より多くのファンが当時のカシオペアのライブパフォーマンスを目にする機会を得ました。

世界規模の制作体制

アルバム、映像作品ともに、その制作クレジットからはワールドツアーという活動規模の大きさが読み取れます。特に映像作品のクレジットには、ブラジル、オーストラリア、日本、メキシコ、アメリカ合衆国といった各国の技術スタッフやコーディネーターの名前が多数連ねられています。テクニカルディレクター、カメラマン、ビデオエンジニア、サウンドエンジニアなど、それぞれの国で最高のパフォーマンスを記録するためのチームが編成されたことがわかります。ディレクターはHideaki Oguri氏、プロデューサーはRyoichi Okuda氏らが担当し、ツアー全体のスーパーバイズやマネージメント、プロダクションアシスタントなども含め、膨大な数の人員が関わった一大プロジェクトであったことがうかがえます。

これらの作品は、当時のカシオペアが世界を股にかけて活躍していた証であり、その圧倒的な演奏力とエネルギーが凝縮されています。アルバムと映像、それぞれのメディアを通して、1988年のワールドツアーにおける彼らの軌跡を追体験することができる、ファンにとって非常に重要な記録と言えるでしょう。

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