WX シリーズ

WXシリーズ：革新と終焉を辿った日本語入力システム

エー・アイ・ソフトが開発した日本語入力システム『WXシリーズ』は、その高いカスタマイズ性とユーザーコミュニティの活発さによって、多くのユーザーから支持された歴史を持つソフトウェアです。本稿では、WXシリーズの進化、特徴、そしてその衰退に至るまでの経緯を詳細に解説します。

WXシリーズの機能と特徴

WXシリーズは、WX、WXS、WXP、WXII、WXII+、WXIIIと進化を続け、最終的にはWXGへと至りました。他のIMEと比べて際立っていたのは、その高い拡張性です。ユーザーは、独自の辞書を作成したり、他のIMEからの辞書をインポートすることができ、まさに自分好みにカスタマイズできる点が魅力でした。ローマ字入力方法やキー配置も自由に設定できるなど、操作性の柔軟性も高く評価されていました。

さらに、MAPI（マルチアプリケーションインターフェイス）に対応していたため、特定のアプリケーションに限定されない汎用性の高さも特徴でした。当時、複数のIMEを使い分ける必要があったユーザーにとって、WXシリーズは操作性の統一性と効率性の向上に大きく貢献しました。

ユーザーコミュニティと進化

NIFTY-Serve（現@nifty）などのフォーラムでは、WXシリーズに関する活発な議論が交わされ、ユーザーが作成した辞書やカスタマイズツールが公開されるなど、ユーザーコミュニティがWXシリーズの発展を支えていました。ユーザーからのフィードバックを反映した改良が重ねられ、WXシリーズは着実に進化を遂げました。特に、約2万人のOS/2ユーザーによる署名活動がきっかけとなり、OS/2版の開発が実現したエピソードは、ユーザーと開発者との強い結びつきを示す象徴的な出来事と言えるでしょう。

フリーソフトウェア化と終焉

@niftyのステーション閉鎖後、インターネット上にサポートページ「e言葉」が開設され、WXG for Linux/FreeBSD 1.0βがフリーソフトウェアとして公開されました。これは大きな話題となり、多くのユーザーに歓迎されましたが、正式版の公開を待たずしてプロジェクトは終了してしまいました。その後、日英翻訳エンジンを搭載したWXG Ver.4が発売されましたが、製品は廃止されました。

エー・アイ・ソフトは2006年11月にエプソン販売に吸収合併され解散。その後、エプソン販売によるサポートが継続されましたが、現在はWXシリーズを含め、全てのサポートが終了しています。

WXシリーズの歴史

WXシリーズの歴史は、1986年にかな漢字変換機能を搭載したワープロソフト『創文』の開発に遡ります。その後、『創文α』においてかな漢字変換機能が独立したモジュールとしてWXとなり、WXS、WXPなどのバージョンを経て、PC-9800シリーズ、DOS/V|DOS_Vマシン、そしてWindowsなど、様々なプラットフォームに対応するようになりました。OS/2版のリリースや、Windows 95/98/Me、Mac OS、Linux/FreeBSDへの対応など、幅広いOSへの対応も試みられました。

WXシリーズは、Microsoft IMEの開発にも関わっており、初代Microsoft IMEはWX2 for WindowsをOEM供給したもので、Microsoft IME 95以降はWX3をベースに開発されました。WXシリーズは、単なる日本語入力システムにとどまらず、当時のコンピューティング環境に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

まとめ

WXシリーズは、高いカスタマイズ性と活発なユーザーコミュニティによって支えられた、画期的な日本語入力システムでした。フリーソフトウェア化への試みなど、その革新的な姿勢は高く評価されるべきでしょう。しかし、時代の変化や企業合併などにより、最終的にはサポートが終了しました。それでも、WXシリーズが多くのユーザーに与えた影響は、現在でも語り継がれるべき歴史的遺産と言えるのではないでしょうか。 対応OSはMS-DOS、Windows、Mac OS、OS/2など多岐に渡りましたが、Windows 2000以降のOSへの公式な対応は行われませんでした。

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