XF-92 (航空機)

XF-92: アメリカ初のデルタ翼機

XF-92は、アメリカ合衆国において初めてデルタ翼を採用した試作ジェット機です。この機体は、コンソリデーテッド・ヴァルティ航空機（現在のコンベア社）によって1945年から1948年にかけて開発されました。試作機は1機のみが製造され、その後の航空機設計において重要な役割を果たしました。

開発の経緯

開発は、1945年9月にアメリカ陸軍航空軍から超音速迎撃機計画MX-813に基づいて発注されたことから始まります。当初、コンベア社はラムジェット推進を用いた複雑なデザインを考案し、社内コード7002のもと基礎研究に取り組みました。しかし、その結果、低速時および大仰角での安定性の欠如が指摘され、計画は危機に直面しました。

そこで1946年7月、ドイツからの技術者アレキサンダー・マルティン・リピッシュが技術顧問として迎えられ、既存のグライダー設計に基づく新たなデルタ翼案が提案されました。これにより、機体がXP-92として再設計され、軍の承認を受けて進行しました。

機体仕様と性能

XP-92は、1947年に初めてロールアウトされ、後退角60度のデルタ翼を中翼配置で持ち、垂直尾翼もデルタ形状となっています。武装はなく、機首にインテイクが配置されており、エンジンは当初ウェスティングハウスJ30の使用が予定されていましたが、推力不足が懸念されたため、後にアリソンJ33-A21（推力2,087kg）に換装されました。

この改修に伴い、機体の名称は1948年6月にXF-92Aに変更されました。滑走試験は1950年4月1日から開始され、9月18日には初飛行が行われましたが、結果的には期待された性能には達しませんでした。改修が進められたものの、ダイブテストにおいても音速に到達することができなかったのです。

最終的な登場機はアフターバーナー付きのJ33-A-29（推力3,720kg）に改修され、限界試験で一度の音速突破を果たしましたが、その性能は多くの課題を残したままでした。

遺産と影響

XF-92の開発は、デルタ翼機の設計における重要なステップでありました。リピッシュが主導するもと、コンベア社はその後のF-102、F-106、B-58といった一連のデルタ翼機の開発に向けてもデータを活用し、大きな影響を与えました。

XF-92はその設計と試行の影響から、1956年公開の映画『Toward the Unknown』や1957年の『JET PILOT』にも登場しました。その後、機体はオハイオ州の国立アメリカ空軍博物館に展示されています。

仕様

• - 全長: 12.92m
• - 全幅: 9.52m
• - 全高: 5.38m
• - 空虚重量: 4.1t
• - エンジン: J33-A-29（推力3,720kg）
• - 乗員: 1名
• - 武装: なし

XF-92は短期間の運用ながら、航空機設計の進歩の象徴として記憶され、他の機体に与えた影響は今なお語り継がれています。

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