XLRタイプコネクター

XLRコネクターとは

XLRコネクターは、アメリカのキャノン社（現ITTインターコネクト・ソリューション）が開発したオーディオコネクターの規格です。キャノンコネクターとも呼ばれ、プロのオーディオ業界ではデファクトスタンダードとなっています。また、リヒテンシュタインのノイトリック社が製造する製品も多く、「ノイトリックコネクター」とも呼ばれます。IEC規格（IEC 61076-2-103）にも準拠しています。

構造

XLRコネクターの特徴は、1番ピンが他のピンよりも先に接続される構造になっている点です。1番ピンは原則として接地（GND）に使用され、信号線接続前に機器間の電位差を解消します。これにより、抜き差し時のノイズを抑制し、オーディオ用途での信頼性を高めています。

プラグ側がメス、ジャック側がオス電極という形状も特徴的です。多数の電極を持ちながらも抜き差しが容易で、ロック機構により抜けにくいという利点があります。外観は、舞台やスタジオでの照明反射を避けるため、艶消しの銀色や黒色が用いられることが一般的です。

用途

XLRコネクターは、業務用・放送用機器、ハイエンドAV機器に広く使用されています。1ピン当たりの電流容量が比較的大きいため、電源コネクターやスピーカー接続といった電力用途にも利用されます。

オーディオ用途

オーディオ用途では、平衡（バランス）回路の接続において標準的なコネクターとなっています。特にマイクロフォンの接続で最も一般的ですが、スピーカー接続やデジタル・アナログオーディオ伝送にも用いられます。

一般の電子機器では、出力側にメスコネクターを用いてショート事故を防ぐのが通例です。しかし、プロオーディオの世界では、ミキサーからマイクへ電源（ファンタム電源）を供給する必要があるため、ミキサー入力側のショート防止を優先し、マイクなどの出力側をオス、ミキサーなどの入力側をメスにするという逆の構造が一般的です。

3極コネクターの平衡接続では、信号線の正相（HOT）を2番ピンにするか3番ピンにするかで混乱がありましたが、1992年にAES（Audio Engineering Society）が2番ピンをHOTとする規格（AES14-1992）を制定し、現在では国際標準となっています。同時に、5極コネクターにおける2ch平衡接続のピンアサインも規格化されました。

不平衡回路への接続

XLRコネクターからフォーンコネクターなどの不平衡回路に接続する際には、逆相側（COLD、XLRの3番ピン）を非接続にするか、不平衡側のGNDに接続します。逆相側を非接続にするとノイズキャンセル効果が得られないため、逆相側をGNDに接続するのが一般的です。ただし、インピーダンス整合のためには、マッチングトランスの使用が推奨されます。

フォーンコネクターへの接続

XLRから2極フォーンコネクター（Tip-Sleeve）に接続する場合は、XLRの2番ピンをTipに、1番と3番ピンをSleeveに接続するケーブルが一般的です。XLRから3極フォーンコネクター（Tip-Ring-Sleeve）に接続する場合は、XLRの2番ピンがTip、3番ピンがRing、1番ピンがSleeveに接続されるのが一般的です。

モノラル端子への入力

ステレオLR信号をモノラル信号に変換するコネクターがありますが、これにXLR-TRS（平衡モノラル）ケーブルを介してマイクなどを接続すると、HotとColdの信号が相殺され無効な接続となります。平衡信号を不平衡モノラル信号として取り出す場合は、平衡モノラル用のXLR-TRS変換ケーブルの使用を避けるべきです。

ステレオ端子への入力

ICレコーダーなどの不平衡ステレオTRS端子にダイナミックマイクを接続する際に、XLRの2番ピンをTipとRing、1番と3番ピンをSleeveに接続した変則配線のケーブルが用いられることがあります。この配線であれば、信号相殺を起こさずに、正相信号をLR共通の信号として取り出すことができます。

家庭用オーディオ機器

家庭用オーディオ機器にも、ラインアウトやバランス接続用としてXLRコネクターが採用されることがあります。しかし、この場合は、マイクロフォン信号よりも桁違いに大きなラインレベルの信号を扱うため、ケーブルも短くノイズの影響を受けにくいため、必ずしもXLRコネクターを用いるメリットは大きくありません。

左右信号が独立しているという意味でのオーディオ的なバランス接続であれば、赤白RCA端子やミニプラグなどでも代替可能です。XLRコネクターは、その信頼性とファッション性から、ハイエンドオーディオ製品に採用されることがあります。

電源コネクターとしての使用

以前は、日本の放送機器の電源接続部分に2極のXLRコネクターが多用されていましたが、現在ではIECタイプの3極コネクターに置き換えられています。

ITTキャノンは、自社のXLRコネクターを一次電源用として使用することを認めていません。

主なメーカー

ITTインターコネクト・ソリューション（旧キャノン社）
スイッチクラフト
ノイトリック
日本航空電子工業（現在は製造していない）
ヒロセ電機
アンフェノール

注意点

バランス伝送を謳っていても、内部がアンバランス接続になっているアンプが存在することがあります。

また、4ピン以上の多極コネクターでは、ピンの配列がメーカーによって異なる場合があるため注意が必要です。6極コネクターには5極が挿入できてしまうため、6Aコネクターが使われることがあります。6と6Aは互換性はありません。

一部のコンボジャック端子では、XLR3極コネクターとの組み合わせでファンタム電源が供給されない不具合が報告されています。

主な関連規格

AES14-1992: XLRコネクターの極性、接続の方向性に関する規格
AES3-2003 (AES3-1992): デジタルオーディオ信号のバランス伝送に関する規格