XPCOM

XPCOM (Cross Platform Component Object Model) について

XPCOM (Cross Platform Component Object Model) は、Mozillaプロジェクトによって開発された、クロスプラットフォームなソフトウェアコンポーネント技術です。これは、マイクロソフトのComponent Object Model (MS COM) のオープンソース実装に相当するもので、異なるプラットフォーム間でのソフトウェアの相互運用性を高めることを目的としています。

技術的な特徴

実装言語と対応プラットフォーム:
XPCOMは主にC++で実装されており、主要なオペレーティングシステムであるLinux、Windows、macOS上で動作します。これにより、開発者は異なるOS環境でも同じコードベースを使用し、効率的な開発が可能になります。

多言語バインディング:
XPCOMは、C++だけでなく、JavaScript、Java、Pythonといった他のプログラミング言語との連携も可能です。これは、それぞれの言語の特性を活かした開発ができることを意味しており、開発の柔軟性を高めています。

インターフェース記述言語 (XPIDL):
XPCOMのインターフェースは、XPIDL (XPCOM Interface Description Language) という専用のインターフェース記述言語を用いて定義されます。これにより、コンポーネントのインターフェースを明確に定義し、異なる言語間での一貫性を保つことができます。

コンポーネントとクラス

XPCOMは、ファイルやメモリの管理、文字列や配列などの基本的なデータ構造を提供するコアコンポーネントとクラスを提供しています。しかし、ほとんどのXPCOMコンポーネントはコア以外の部分、例えばGeckoレンダリングエンジンなどで提供されています。これにより、開発者は特定の機能に特化したコンポーネントを再利用し、複雑なソフトウェアの開発を効率的に進めることができます。

MonoのCOM相互運用

Mono環境におけるCOM相互運用は、Microsoft COMだけでなく、XPCOMも基盤としています。これにより、.NET環境からもXPCOMのコンポーネントを利用することが可能になり、より幅広いプラットフォームでのソフトウェア開発を支援します。

XUL/XPCOMベースのアドオンの段階的廃止

Mozillaは、FirefoxやThunderbirdのアドオン開発にXUL/XPCOMを利用したSDKを提供してきましたが、これらの技術を用いたアドオンの段階的な廃止を表明しています。これは、Web技術の進歩に合わせて、より現代的なWebExtensionsベースのアドオンに移行するための方針です。

Firefox Quantum 57での全面廃止:
Firefox Quantum 57 では、XUL/XPCOMベースのアドオンが全面的に廃止されました。この変更により、従来の「旧式アドオン」は動作しなくなり、WebExtensionsベースのアドオンへの移行が必要となりました。

Thunderbirdでの一部廃止:
Thunderbirdでも、バイナリXPCOMなど一部の機能が廃止されています。これにより、ThunderbirdのアドオンもWebExtensionsへの対応が求められています。

WebExtensionsへの移行

Firefox Quantum以降の拡張機能は、XUL/XPCOMの代わりに、Microsoft Edge、Google Chrome、OperaなどでサポートされているWebExtensionsを使用します。これにより、開発者は複数のブラウザで共通の拡張機能を開発しやすくなり、ユーザーはより安全で効率的なアドオンを利用できるようになります。

関連技術

Gecko: Mozillaが開発したWebブラウザのレンダリングエンジンで、XPCOMを基盤としています。
XUL: Mozillaが開発したXMLベースのユーザーインターフェース記述言語で、XPCOMと組み合わせて使用されていました。
XULRunner: XULとXPCOMをベースとしたアプリケーション開発プラットフォーム。
XPConnect: JavaScriptからXPCOMコンポーネントを利用するためのバインディング。
JavaXPCOM, PyXPCOM, RbXPCOM, PlXPCOM: それぞれJava, Python, Ruby, PerlからXPCOMコンポーネントを利用するためのバインディング。

参考文献

以下に、XPCOMに関する詳しい情報を得られるリソースをまとめました。これらのリンクを通じて、より深くXPCOMを理解し、開発に役立てることができます。

Mozilla/XPCOM'>XPCOM - Mozilla | MDN
Mozilla/XPCOM/Reference'>XPCOM reference - Mozilla | MDN
mozdev books:8.XPCOM
Mozilla/Gecko/Embedding_Mozilla'>Gecko Embedding API Reference
Mozilla/Gecko/Embedding_Mozilla/Basics'>Gecko組み込みの基礎
Mozilla/XPCOM/Reference'>XPCOMリファレンス
まじらもじら:埋め込み用API
dW:XPCOM 第1回 XPCOM入門
dW:XPCOM 第2回 XPCOMコンポーネントの基本
dW:XPCOM 第3回 XPCOMのセットアップ
* dW:XPCOM Part 5: Implementation

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