YMF262

YMF262: ヤマハのFM音源チップ

YMF262は1991年10月からサンプルが出荷された、ヤマハが開発したFM音源チップです。市場に登場した当初の価格は5,500円で、OPL3（FM Operator type-L3）という名称でも知られています。この音源チップは、PC用サウンドボードであるSound Blaster Pro2のために設計され、結果的にPC用内蔵音源のデファクトスタンダードとして全世界に普及しました。さらに、後に携帯電話向け音源チップの基礎ともなりました。

YMF262の概要

YMF262は、YM3812（OPL2）の上位モデルとして位置づけられ、技術的にはOPL2を二つ束ねたような機能を持っています。これは、元々Sound Blaster Proに搭載されていたOPL2を一つにまとめる必要性から開発が進められた背景によるものです。ソフトウェア的にはOPL2×2とほぼ同じ性能ですが、いくつかの重要な相違点が存在します。

主な機能と改善点

1. CSM音声合成モードの廃止

CSM音声合成モードはチップのタイマー割り込みと連携する機能でしたが、過去のOPL2を用いた音源では、実際に使用されていなかったため、この機能は省かれました。

2. ステレオ出力の実現

YMF262では音声出力が4チャンネルに拡張され、各ボイスごとに出力先のチャンネルを指定できるようになりました。Sound Blaster Pro2では、チャンネル1および2がそれぞれ左と右に設定されています。さらに上位機種では、チャンネル3と4がデジタル信号処理（DSP）向けに割り当てられることもあります。

3. リズムモードの改良

YMF262のリズム音モードでは、最大で5チャンネルのリズム音を生成することが可能です。OPL2では両方の音源がリズムモードで使用されることで、実質的には10チャンネルのリズムを創出できましたが、YMF262ではその必要がなくなっています。

4. 波形のバリエーションの追加

OPL2の機能に加えて、YMF262では合計8種類の波形が使用可能となり、モジュレータおよびキャリアの双方で選択することができます。

5. 位相同期の向上

OPLとOPL2では、モジュレータとキャリアの位相がわずかにずれていましたが、YMF262では完全に同期されるようになり、音質改善が実現しました。

6. 4オペレータモードの追加

2つの2オペレータボイスを組み合わせて、4オペレータボイスとして利用できる新しいモードが導入され、最大6ボイスの発音が可能です。

発音モードの多様性

YMF262では、多種多様な発音モードが設けられており、多くの楽器音を同時に鳴らすことが可能です。例えば、2オペレータの音声18音や、リズム音を含む混合発音ができるため、ユーザーは音楽制作時に柔軟性を持って複数の音色を扱えます。

関連技術とバリエーション

YMF289（OPL3-L）は、1994年に低電圧バージョンとして登場し、省エネルギー型の設計が施されています。また、YMF701から始まるOPL3-SAシリーズは、より集約されたPC用サウンド機能を持つワンチップソリューションとして展開されています。これにより、ユーザーはよりコンパクトなデバイスで高品質なサウンドを体験できます。

このように、YMF262は単なる音源チップに留まらず、音楽やゲームなど、さまざまな分野でのサウンド体験を豊かにするための重要な役割を果たしているのです。

採用例

Sound Blaster Pro2やSound Blaster 16など、数多くの製品でこの技術が利用されています。他にも、EPSONのPCシリーズや特定のゲームタイトルでも採用され、多様な環境で活躍しています。

参考文献

• - SOUND BLASTER オフィシャルブック マルチメディアプログラミング (アスキー出版局, ISBN 4-7561-0472-X)
• - その他関連資料や技術文献

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