ZM-87

ZM-87携行型レーザー妨害機：光学兵器の光と影

ZM-87は、中国北方工業公司（Norinco）が1990年代に製造した携行可能な軍用レーザー発振装置です。その目的は、敵の戦闘員や兵器に搭載された光学機器への損傷または機能不全を引き起こすことにありました。具体的には、レーザー照射によって敵の視覚に障害を与え、戦闘能力や観測能力を低下させることを目指していました。また、敵兵器のレーザー距離計、ビデオカメラ、ミサイル誘導装置といった光学機器の機能を無効化することも意図されていました。

開発と公開

ZM-87の開発は1980年代後半に始まり、1994年11月に初めて中国北方工業公司によって公開展示されました。1995年には、フィリピンとアラブ首長国連邦で開催された国際的な防衛展示会に出品され、その存在は世界に広く知られることになります。当時、アメリカ国防総省内では、この兵器が第三世界諸国に渡る可能性を懸念する声も上がっていました。

国際的な規制と製造終了

レーザー兵器の危険性、特に失明を引き起こす可能性については、1980年代から国際的な議論が続けられてきました。回復不能な失明は、殺傷行為以上に深刻な苦痛を伴うという認識が、規制強化の背景にありました。ZM-87の登場は、こうした議論に拍車をかけました。アメリカ軍も同様のレーザーシステムを開発しており、これらの兵器の存在は、国際的なレーザー兵器規制の推進力を高めることになります。

1995年10月には、特定通常兵器使用禁止制限条約の附属議定書IVが採択され、恒久的な失明をもたらすように設計されたレーザー兵器の使用と移譲が禁止されました。中国はこの議定書を批准し、2000年12月までにZM-87の製造を終了させ、市場から回収したとされています。

ZM-87の仕様

ZM-87は、重機関銃を思わせるような外観をしています。照準器付きのビームエミッターは長さ84センチメートルで、三脚に取り付けられ、外部電源装置とケーブルで接続されます。主な仕様は以下の通りです。

レーザーパルス：パルス間隔5ヘルツ、2つの波長で同時送出可能
ピーク出力：15メガワット
有効射程：
人間の目を損傷可能：2～3キロメートル（7倍の拡大鏡使用時：5キロメートル）
一時的眩惑：10キロメートル
バッテリー：1個で1万パルス以上の送出が可能
連続使用時間：常温で5分間
重量：約33キログラム（本体）

関連事件

ZM-87は、いくつかの事件に関連付けられています。1997年には、ファンデフカ海峡でカナダ軍のヘリコプター搭乗中のアメリカ海軍士官がレーザー照射を受け、網膜を負傷する事件が発生しました。ロシアの貨物船からの照射が疑われましたが、確証はありません。2003年には、北朝鮮がアメリカ陸軍のAH-64攻撃ヘリコプター2機にレーザー照射を行い、ZM-87が使用された可能性が報じられました。幸いにも、米軍機は被害を受けませんでした。

まとめ

ZM-87携行型レーザー妨害機は、その開発から製造終了、そして関連事件まで、レーザー兵器の危険性と国際的な規制の動向を象徴する存在と言えるでしょう。光学兵器技術の進歩と、その倫理的な課題を改めて考えさせる、重要な事例となっています。

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