せん妄

せん妄（Delirium）

せん妄とは、意識の混濁や錯乱が現れる急性の精神状態を指します。具体的には、見当識障害や注意力の散漫、幻覚や錯覚を伴うことが特徴で、特に高齢者や集中治療室に入院している患者に見られることが多いです。せん妄の発症は突然で、急性または亜急性の経過をたどり、症状は夜間に悪化する傾向があります。時には、命にかかわる危険な状態に至ることもあり、迅速な対処が求められます。

症状

せん妄の症状には多岐にわたるものがあり、以下のようになります：

- 意識レベルの低下
- 注意力や判断力の低下
- 思考や気分の不安定化
- 幻覚や錯覚の出現

これらの症状は、患者が突然混乱し、自分の現状が把握できなくなるケースが多いです。特に「どこにいるか、何の日かもわからない」という状態は、典型的なせん妄のエピソードと言えます。また、高熱や感染症に伴って子供に発生することもあります。ほとんどの患者は、せん妄の経験を覚えており、その苦痛を訴えることが多いです。

危険因子

せん妄のリスクを高める要因には、以下のものがあります：

- 高齢者
- 認知症
- 重症患者
- 薬物使用・依存
- 感染症このような危険因子を特定しておくことで、予防的な対策を行うことが重要です。

診断基準

せん妄の診断には、『精神障害の診断と統計マニュアル』（DSM）やConfusion Assessment Method（CAM）といった基準が使われます。主に急性の発症、注意力不足、思考の乱れ、意識の変化が診断の基礎になります。診断には、症状の出現が急性であることが必要です。

鑑別診断

せん妄は他の精神障害、特に認知症や急性の脳損傷としばしば混同されます。認知症では慢性的な症状が続くのに対し、せん妄は急激に現れ、意識の混乱を伴います。また、すでに病歴のある高齢者や認知症の患者でも、新たにせん妄が発生することがあります。

予防と治療

せん妄を予防するための対策には、麻酔の深さをモニタリングすることや、患者自身の刺激を抑える環境作りが含まれます。2016年の研究によれば、集中治療室での適切な麻酔管理がせん妄の発生率を低下させることが示唆されています。

治療に関しては、抗精神病薬が用いられることが一般的ですが、効果には賛否があります。イギリスのガイドラインでは、ハロペリドールやオランザピンが推奨されていますが、リスクを慎重に評価する必要があります。

特別な考慮

低活動型のせん妄に特化した治療法はまだ確立されておらず、専門医の意見や症例によるアプローチが求められています。また、非薬理学的な介入として運動療法や家族教育も効果が期待されていますが、研究はまだ不足しています。

近年の調査やレビューから得られる情報はますます多様化しており、せん妄治療に関する理解が深まることが期待されています。引き続き、研究と実践を通じてせん妄に対する効果的なアプローチを模索する必要があるでしょう。

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