にんべん

株式会社にんべん：300年以上の歴史を誇る鰹節の老舗

株式会社にんべんは、東京都中央区日本橋室町に本社を構える、水産加工品メーカーです。特に鰹節、ふりかけ、調味料の製造で知られ、元禄12年（1699年）創業という非常に長い歴史を持っています。業界でも最古参に位置し、首都圏や東日本では高いブランド力を誇ります。

社名の由来と「伊兵衛」襲名

「にんべん」という社名は、創業時の屋号「伊勢屋伊兵衛」に由来します。商標の「イ」の文字は伊勢屋伊兵衛から取られ、堅実な商売を意味する鉤型と組み合わされています。また、贈答品や高級品に使われる「ミツカネにんべん」は、客、創る人、商いする人の三者を象徴しています。

歴代の社長は就任時に「伊兵衛」を襲名することが慣例となっており、襲名時には戸籍名も変更されます。これは、伝統を重んじ、その名を未来へと繋ぐという強い意志の表れでしょう。

創業から現代まで：歴史を彩る数々の出来事

創業前夜

高津家の家祖、与次（治）兵衛は、尾張国から伊勢国三重郡四日市中町へ移り、雑穀、油、干鰯の商いを始めました。そして、延宝7年（1679年）に創業者の初代高津伊兵衛が誕生します。

江戸での独立と鰹節商への道

元禄4年（1691年）、初代伊兵衛は単身江戸へ出て、日本橋小舟町の雑穀商で奉公。元禄12年（1699年）に独立し、鰹節や塩干の販売を開始しました。これが、にんべんの創業です。

初代伊兵衛の時代（1705年 - 1724年）

宝永2年（1705年）に屋号を伊勢屋と定め、伊兵衛を名乗ります。加賀藩主前田綱紀の干肴御用を譲り受け、前田家との繋がりを深めます。大坂の商人との取引も開始し、事業を拡大。瀬戸物町（現在の所在地）に出店し、「現金掛け値なし」の商法を取り入れました。大火に見舞われるも、土蔵造りに建て替え、難を逃れます。

二代伊兵衛の時代（1724年 - 1749年）

初代伊兵衛の急病により、長男が二代目を襲名。しかし、新年の進物用生鯛の値段付けを巡り、前田家の御用を外されるなど、苦難も経験します。経営分析の結果、経営状況が悪化していることが判明し、倹約に徹する計画を立てました。

三代伊兵衛の時代（1749年 - 1777年）

二代目の弟が三代目を襲名。宝暦の大火の被災者支援に鏡餅を寄進し、福岡藩主から紋を下賜されます。伊勢屋の歴史をまとめた『追遠訓』や、遺言・家訓としての『遺囑』を著しました。

四代伊兵衛以降

血縁のない者が跡を継ぐなど、様々な変遷を経て、明治維新を迎えます。明治時代には、日露戦争で鰹節の供給を一手に引き受けるなど、重要な役割を果たしました。

株式会社として新たなスタート

大正7年（1918年）に「株式会社高津商店」として法人化。関東大震災で店舗を焼失するも、すぐに再建。昭和23年（1948年）には、社名を「株式会社にんべん」と改めました。その後、つゆの素の開発やフレッシュパックの導入など、革新的な取り組みを続け、現在に至ります。

現在のにんべん

現在は、鰹節を始めとする様々な商品を展開し、「日本橋だし場」という飲食店も運営しています。また、テレビドラマや書籍への協賛も積極的に行い、その名は広く知られています。

伝統と革新の融合

株式会社にんべんは、300年以上の歴史の中で、伝統を守りながらも、常に新しいことに挑戦してきました。その姿勢は、これからも変わることなく、未来へと受け継がれていくでしょう。

にんべんの歴史は、日本の食文化の歴史そのものと言えるかもしれません。

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