はすみとしこ

はすみとしこ（1978年2月 - ）は、日本の女性漫画家です。自らを「カリカリ企画ホワイトプロパガンダ漫画家」と称し、保守的な政治観を持つことで知られています。その作品は風刺漫画の形式をとり、社会問題や政治的なテーマを扱っています。

人物と来歴

はすみとしこは、自身の漫画を描く音や猫のドライフードの音から「カリカリ」という言葉を引用しています。政治観は保守的であり、「国の利益のためなら右も左も関係ない」と発言し、「世の為、人の為」を好きな言葉としています。評論家のトニー・マラーノと共に活動することもあります。自身を「政治の入り口の誘導員」と位置づけ、政治に関心のない層にもメッセージを発信していると述べています。風刺漫画家としては、嫌いな対象をあえて綺麗に描くという手法をとり、小林よしのりとは異なるアプローチをとっています。作品制作においては、自身の主観ではなく、第三者の視点を重視し、基本的に取材は行わないという姿勢を貫いています。2014年には、シーシェパードの取材でフェロー諸島や和歌山県太地町に滞在しました。

風刺漫画デビュー

はすみとしこの風刺漫画家としてのデビューは、2015年に遡ります。ネット上で公開していた漫画が、「テキサス親父日本事務局」局長の藤木俊一の目に留まり、書籍化の話が持ち上がりました。当初は素人臭さが指摘されたものの、一枚絵のイラストを描くようになってからはイラスト集としての販売が決まりました。

デビュー作となるイラスト集のきっかけとなったのは、2015年9月に公開されたシリア難民の少女のイラストでした。このイラストは、国際慈善団体セーブ・ザ・チルドレンUKの写真家ジョナサン・ハイアムが撮影した写真を無断でトレースし、少女に邪悪な笑みを浮かべさせ、「何の苦労もなく、生きたいように生きていきたい……他人の金で。そうだ、難民しよう！」というコメントを添えたものです。このイラストは、差別的であるとして多くの批判を浴びました。Facebook上では、イラストの削除を求める署名運動が起こり、最終的に14,144筆もの署名が集まりました。ハイアム自身も、無垢な子供の写真が偏見を表現するために使われたことに衝撃を受け、深く悲しんでいると述べました。

はすみはその後、撮影者への配慮を理由にイラストを削除しましたが、自身のFacebook上で「イラストは全ての難民を否定するものではない」と釈明しました。この騒動は、国内外のメディアで大きく報道され、ワシントン・ポスト紙は「はすみは難民の現実を理解していない」と批判しました。また、ドバイのstepFEEDは「シリア難民危機に対して最悪のリアクションをとった7人」の1人として、はすみを選出しました。

一連の騒動は、はすみのデビュー作『そうだ難民しよう! はすみとしこの世界』の出版へと繋がりました。この作品は、発売前からアマゾンジャパンの売れ筋ランキングで1位を獲得しましたが、同時に出版反対運動も起こりました。作品には、在日コリアンや難民を風刺した内容が含まれており、「差別を助長する」という批判を受けました。参議院議員の有田芳生らが記者会見を開き、出版に抗議する事態にまで発展しました。はすみは、これらの抗議活動を「言論の自由を弾圧する行為」と非難しました。

訴訟

2020年、ジャーナリストの伊藤詩織は、はすみが自身の風刺漫画で名誉を毀損したとして、はすみとリツイートした漫画家らを提訴しました。この訴訟では、はすみが伊藤を「枕営業」をしていたかのように描いたことが問題視されました。東京地裁は、はすみに88万円の賠償を命じ、東京高裁は賠償額を110万円に増額する判決を下しました。はすみは最高裁に上告しましたが棄却され、賠償が確定しました。はすみは、自身には財産がないと主張していましたが、著作物による印税収入があると考えられています。

主な作品

『そうだ難民しよう! : はすみとしこの世界』 (青林堂、2015年)
『ジャパニズム28』 (青林堂、2015年)
* 『日韓友好へのススメ。』 (夕刊フジ、2014年)

はすみとしこは、その風刺漫画を通じて、社会的な議論を巻き起こし、賛否両論を呼んでいます。その作品は、表現の自由や社会問題について、私たちに問いかけるものとなっています。

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