モエビ

モエビ（藻海老）

モエビ（学名: Metapenaeus moyebi）は、クルマエビ科に属するエビの一種です。西日本からパキスタンにかけてのインド太平洋沿岸に広く分布しており、食用として利用されています。

ただし、地域によっては「モエビ」という名称が、本種を含む小型のエビ類を指す総称として使われることがあります。また、モエビ科(Hippolytidae)という、本種とは異なる分類群も存在するため、注意が必要です。

石川県石崎では、モエビが夏に多く獲れることから「ナツエビ」と呼ばれています。

特徴

成体の体長は100mmから130mm程度で、同じクルマエビ科のシバエビやヨシエビよりも小型です。額角は水平に前へ伸びており、上縁に6個から8個の鋸歯があります。甲羅は薄くて柔らかく、表面には細い毛が生えた小さなくぼみが散在しています。新鮮なモエビは淡い黄色から淡い青緑色をしており、尾びれの縁が緑色になっているのが特徴です。この特徴から、英語では"Green tail prawn"（緑色の尾をしたエビ）と呼ばれています。

分布

モエビは、パキスタンから東南アジア、そして西日本にかけてのインド洋と西太平洋の熱帯・温帯海域に広く分布しています。日本では、日本海側では七尾湾以南、太平洋側では東京湾以南に分布しています。温帯地域では個体数は少ないものの、熱帯地域では多く生息しており、重要な水産資源となっています。

生態

水深20mまでの内湾や汽水域の砂泥底に生息し、名前の通りアマモなどの海藻が生い茂る場所に多く見られます。昼間は砂泥に浅く潜り、夜になると活動を開始します。クルマエビ科のエビの中でも特に浅い海域に生息し、夜には内湾の波打ち際や河口付近で見かけることもあります。

産卵期は7月から9月にかけてですが、寿命や詳しい生態についてはまだ良く分かっていません。しかし、漁獲量はクルマエビよりもはるかに多く、水産資源として重要な位置を占めています。モエビの旬は漁獲量が多くなる盛夏で、主に煮付けや寿司のネタとして利用されます。

学名の変遷

モエビは、日本の動物分類学の基礎を築いた岸上鎌吉によって、1896年にPenaeus moyebiとして初めて記載されました。種小名の"moyebi"は、日本語名に由来しています。

しかし、岸上自身が記載から4年後に自説を訂正し、既知の同属種であるMetapenaeus affinisと同種であるとしました。

その後、久保伊津男が再びモエビを別種と判断し、1954年に新種M. burkenroadiとして記載しましたが、先取権の原則により、最初に岸上が記載した学名が有効とされ、現在に至っています。

もう一度検索