アナストロゾール

アナストロゾール：閉経後乳がん治療におけるアロマターゼ阻害剤

アナストロゾールは、閉経後の女性におけるエストロゲン受容体陽性乳がんの治療に用いられる主要な医薬品です。商品名としてアリミデックスが知られています。本剤はアロマターゼ阻害薬に分類され、体内でエストロゲンが生成されるのを防ぐことで、がん細胞の増殖を抑制します。

作用機序

乳がんの約70％は、エストロゲンの存在下で増殖するエストロゲン受容体陽性乳がんです。閉経後女性では、卵巣からのエストロゲン分泌は減少しますが、アロマターゼという酵素によって、アンドロゲンからエストロゲンが体内で生成されます。アナストロゾールはこのアロマターゼを阻害することで、エストロゲンの供給を断ち、がん細胞の増殖を抑える効果を発揮します。

アナストロゾールはアロマターゼに可逆的に結合し、競合的に阻害します。1mg/日の服用で、アロマターゼ活性を97％近く阻害し、エストラジオール濃度を85％以上低下させることが確認されています。このため、最小有効量は1mg/日と考えられています。コルチコステロイドなどの副腎皮質ステロイドの濃度には影響を与えません。

効能・効果

アナストロゾールの主な効能・効果は閉経後乳がんです。また、乳がんリスクの高い女性の予防にも用いられる場合がありますが、これは承認外の用法です。

副作用

アナストロゾールは比較的安全な薬剤ですが、いくつかの副作用が報告されています。一般的な副作用としては、ほてり、気分変動、関節痛、吐き気などが挙げられます。一方、重大な副作用としては、皮膚粘膜眼症候群、アナフィラキシー、血管浮腫、蕁麻疹、肝機能障害、黄疸、間質性肺炎、血栓塞栓症などが報告されていますが、いずれも発生頻度は低いものです。これらの副作用が現れた場合は、直ちに医師に相談することが重要です。また、妊娠中の服用は胎児への影響が懸念されるため、禁忌となっています。

薬物相互作用

アナストロゾールは、シトクロムP450酵素への影響が少なく、他の薬剤との相互作用は少ないと考えられています。ただし、タモキシフェンとの併用では、アナストロゾールの血中濃度がやや低下する可能性がありますが、臨床的に問題となるレベルではないと考えられています。

薬物動態

アナストロゾールは経口投与され、ヒトにおけるバイオアベイラビリティは完全には解明されていませんが、動物実験では良好な吸収が確認されています。吸収は用量依存的で、食事の影響は少ないです。血中濃度は投与後3時間程度でピークに達し、7～10日程度で定常状態に達します。排泄半減期は約40～50時間であるため、1日1回の服用で十分です。主な代謝経路は肝臓代謝であり、尿中へ排泄されます。

アナストロゾールは、レトロゾールやボロゾールとは異なり、血液脳関門での排出が効率的であるため、中枢神経系への移行は少ないと考えられています。しかし、末梢で生成されたエストラジオールは血液脳関門を通過できるため、中枢神経系のエストラジオール濃度はある程度低下すると考えられます。

まとめ

アナストロゾールは、閉経後乳がんの治療に有効なアロマターゼ阻害剤です。その作用機序、効果、副作用、薬物動態、相互作用などを理解することで、安全かつ効果的な治療に繋がります。本剤の使用にあたっては、必ず医師の指示に従ってください。

もう一度検索