アボリジニ

アボリジニ

アボリジニとは、オーストラリア大陸およびその周辺の島々に住む先住民族を指します。彼らは、イギリス人による植民地化以前からこの土地に住んでおり、その多様な文化と歴史は、オーストラリアの基本的なアイデンティティの一部となっています。特に「アボリジニ」という表現は、近年は「アボリジナル・ピープル」や「Indigenous Australians」など、より多様性を反映した呼称が使われるようになっています。

歴史的背景

アボリジニの祖先がオーストラリアに到達した時期は、約5万年から12万年以上も前であると考えられています。しかし、その到達時期に関しては多くの研究者の間でも議論が続いています。アボリジニの存在は、オーストラリアの多様な文化や社会構成の中で特に重要な位置を占めています。彼らは250以上の言語を持っていたとされ、現在でも120から145の言語が存続しているとされていますが、多くの言語が危機に瀕しています。ヨーロッパ人の入植者が到来した当初、アボリジニの人口は約318,000人から1,000,000人と推定されています。

生活と文化

アボリジニの生活様式は、主に狩猟と採集に基づいていました。彼らはさまざまな食料を求めて土地を巡回し、自然から得られる食材を活用していました。また、アボリジニの食文化は「ブッシュ・タッカー」として知られ、近年では現代のレストランでも取り入れられています。

文化的には、アボリジニは独自の音楽や芸術を持ち、特に「ディジュリドゥ」と呼ばれる木製の楽器が有名です。これは、シロアリによって中空になった木を使用して作られ、低音を生み出す特徴があります。特に呪術医が治療に利用したり、絵画や壁画も残しており、彼らの歴史や信仰を知る手掛かりとなっています。

植民地化の影響

アボリジニは、1788年以降イギリスによる植民地化の影響を受け、多大な被害を被りました。伝染病の流行や、既存の生活様式を脅かされる中で、人口は劇的に減少しました。特に、1920年には約7万人にまで減少したと言われています。これにより、アボリジニの文化や言語は深刻な危機に直面しました。

特に「白豪主義」に象徴される差別政策により、アボリジニの文化は抑圧され、決して容易ではない歴史を歩んできました。1967年には市民権が認められるなど、少しずつ権利の回復が進んでいますが、未だに社会的な格差や差別が存在し続けています。

現代のアボリジニ

現代におけるアボリジニは、彼らの文化を再評価し、各種の権利主張などの運動を展開しています。2008年には政府による公式謝罪が行われ、今後の教育や医療の改善に向けた努力が求められています。2023年には、先住民を代表する機関の設置が憲法に盛り込まれることが国民投票のテーマとなりましたが、結果として否決されるなど、課題は依然として多く残されています。

彼らの文化の豊かさや独自性は、オーストラリアの重要な遺産であり、その未来に向けた取り組みが続いています。アボリジニの存在がオーストラリア社会において意味することを理解し、その歴史から学ぶことは不可欠です。

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