アルカリイオン水

アルカリイオン水とは

アルカリイオン水は、電気分解によって生成されるアルカリ性の電解水の通称です。飲用可能なもの（pH9〜10）と飲用不適な洗浄・掃除用（pH10以上）に大別されますが、本来は明確な区別はありません。

アルカリイオン水とアルカリ性電解水の違い

この記事では、説明のために飲用可能なものを「アルカリイオン水」、飲用不適なものを「アルカリ性電解水」と分けて記述しますが、これは便宜的な分類です。

アルカリイオン水: アルカリイオン整水器で生成されるpH9〜10の弱アルカリ性電解水。胃腸症状改善効果が認められています。
アルカリ性電解水: 二室型または三室型電解槽で生成される、pH10以上のアルカリ性電解水。飲用には適しません。

成分

主な成分は水酸化ナトリウムまたは水酸化カルシウムです。

生成方法

アルカリイオン水は、アルカリイオン整水器を用いて、飲用適の水を電気分解し、陰極側から生成されます。この過程で、水酸化イオン（OH-）と水素ガス（H2）が生じ、微量の水素（0.3〜0.5mg/L）が含まれます。

アルカリイオン整水器

薬機法に基づき承認・認証された医療機器で、「医療用物質生成器」に分類されます。JIS規格（JIS T 2004）に適合した家庭用電解水生成器として規定されています。販売名には「電解水素水」や「電解還元水」などが使われることもあります。

歴史

アルカリイオン水の歴史は1950年代に諏訪方季が開発した電気分解装置「シンノオル液」に遡ります。その後、医療分野での臨床実験を経て、1966年に医療用具として承認されました。1990年代には、その効果に関する議論がありましたが、臨床試験の結果、1999年に胃腸症状への有効性が確認されました。2005年には、家庭用電解水生成器が管理医療機器として位置づけられ、JIS規格が定められました。7月11日は「アルカリイオン水の日」として記念日に登録されています。

アルカリイオン整水器の構造

アルカリイオン整水器は、隔膜で仕切られた陰極と陽極を持つ電解槽で構成されています。電気分解により、陰極側ではアルカリイオン水が、陽極側では酸性イオン水が生成されます。pHや溶存水素濃度は電流値を制御することで調整可能です。

アルカリイオン整水器の種類

大きく分けて、流水式と貯槽式があります。また、設置方法により、据え置き型とアンダーシンク型に分類されます。

効能効果

医療機器としての効能効果は以下の通りです。

アルカリイオン水

慢性下痢、消化不良、胃腸内異常発酵、制酸、胃酸過多の改善

酸性イオン水

弱酸性アストリンゼントとして美容に利用

2005年の法改正により、家庭用電解水生成器は管理医療機器となり、胃腸症状の改善効果が認められています。

アルカリイオン水のその他の利用

料理

素材の味を引き出す効果があり、アク抜き、コーヒーや紅茶の風味向上、米をふっくら炊き上げるなどに利用されます。昆布の旨味成分抽出やパンをふっくら焼き上げる効果も報告されています。

洗濯

粒子汚れの除去、再汚染防止、脱臭効果が高いことが研究で示されています。

美容

酸性イオン水は、肌を引き締める効果があります。

研究成果

アルカリイオン整水器検討委員会による研究で、安全性と有効性が再検証されました。主な研究内容として、動物試験による腸内発酵抑制効果、カルシウム吸収効果、胃粘膜障害抑制効果、臨床試験による制酸効果、胃腸症状改善効果などが報告されています。また、活性酸素による酸化を低減する可能性や、骨形成を促進する効果も示唆されています。

臨床応用

血液透析への応用が試みられています。また、運動による酸化ストレスの低下傾向が報告されています。

歯科

歯垢やバイオフィルム、歯周病原因菌に対する洗口効果が報告されています。

市場

アルカリイオン整水器の出荷台数は年間約19万台です。市場規模は、アルカリイオン水で100億円以上、整水器で400億円規模と言われています。台湾、中国、韓国、アメリカ、ヨーロッパでも販売されています。

アルカリ性電解水（pH10～）

二室型または三室型電解槽で生成されるpH10以上の電解水で、飲用には適しません。洗浄用途に用いられ、pH11程度のものは血液や油脂に対する高い洗浄力があります。市販の強アルカリ性電解水は、水酸化ナトリウムの約0.2%水溶液です。電解質には塩化ナトリウムが使われますが、金属の洗浄には炭酸ナトリウムや炭酸カリウムが使われます。微小な水素気泡が含まれ、1日放置後も安定して存在します。

特性

アルカリ性電解水は、界面活性効果は低いものの、油脂の分解や汚れの離脱を促進します。また、微小水素気泡によるキャビテーション効果で洗浄力が高まります。pH12.5を超えると殺菌効果が高まります。空気中の炭酸ガスと反応してアルカリ性が中和されるため密閉が必要です。

洗浄効果

油脂汚れの除去、再汚染防止に効果があり、低コストで環境負荷が低いとされています。食器、厨房、食品工場、床、カーペット、ガラス、テーブル、手垢落としなど、様々な用途で利用可能です。pH11.5のアルカリ性電解水は、他の水よりも洗浄力が高いことが報告されています。漂白効果を高めるために、過炭酸ナトリウムや過酸化水素を添加することがあります。

歯科医療

歯科医療では、強酸性電解水と組み合わせて、術前後の手洗い、医療器具、歯ブラシ・歯間ブラシの洗浄・殺菌、口臭抑制、根管洗浄、歯周組織の洗浄などに用いられます。薬剤を使わずに多剤耐性菌の出現も防ぎ、人や環境に優しいという利点があります。

まとめ

アルカリイオン水とアルカリ性電解水は、それぞれ異なる特徴と用途を持っています。アルカリイオン水は、胃腸症状の改善効果が認められた医療機器であり、日常生活でも幅広く活用されています。一方、アルカリ性電解水は、高い洗浄力を持ち、様々な分野で利用されています。これらの水を適切に利用することで、健康や生活の質の向上に貢献できます。

[参考資料]
アルカリイオン整水器協議会
一般社団法人日本ホームヘルス機器協会
一般財団法人機能水研究振興財団
パナソニック
* 日本トリム

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