アンタレス

アンタレス（Antares）

アンタレス、またはさそり座のα星Aは、約550光年離れた位置にある明るい恒星です。さそり座に属し、夏の夜空に赤く輝く姿が印象的で、全天の1等星の中でも特に目立つ存在です。この星は、その大きさや明るさ、さらに伴星との関係によって、多くの天文ファンや研究者に興味を持たれています。

特徴

アンタレスは、スペクトル分類でM型の赤色超巨星に分類されており、その直径はなんと太陽の680倍とも言われています。これは以前の推定よりもはるかに大きな数値で、近年の干渉計による測定によって明らかになりました。アンタレスの明るさは、太陽の45000倍から129000倍にあたります。

これまで、アンタレスは1733日を周期とするSRA型の半規則型変光星として知られていましたが、実際の光度変化はそれほどではなく、0.88等から1.16等まで変光するLC型の脈動変光星として再分類されています。また、アメリカ変光星観測者協会には、2180日（約6年）の周期で変光するSRC型の変光星としても記載されています。興味深いことに、変光の振幅が小さく、実際に目視での観測は困難ですが、さそり座のδ星の方が視認しやすい特性を持っています。

伴星

アンタレスには伴星が存在し、これをさそり座α星系と呼びます。主星A（アンタレス）は1.09等の明るさを持ち、約2.9秒離れた位置に5.2等の伴星Bが見られます。伴星は主星から550天文単位の距離にあると推測されています。アンタレスは赤っぽい色をしていますが、伴星Bは青白く、色の対比によりしばしば緑色に見えることがあります。伴星の光度はアンタレスの370分の1ですが、それでもなお太陽の170倍の明るさを誇ります。

これらの星同士は、明るさの差が大きいために、一般的には150mm口径の望遠鏡が必要とされますが、長焦点の良好な光学系を持つ80mm屈折望遠鏡でも観測可能な例が報告されています。特に、伴星は月による掩蔽の際、主星が隠されている間に数秒間観察できることがあります。伴星の発見は1819年4月の月による星食の際に行われました。さらに、伴星は878年の周期で主星の周りを公転しているとされています。

掩蔽（えんぺい）

アンタレスは白道近くに位置しているため、月による掩蔽が観測されることがあります。通常、他の恒星が月に隠れる際は瞬時に光が消えますが、アンタレスの場合はその視直径が大きいため、消失には約10分の1秒かかります。また、黄道から5度以内に位置する1等星の一つであるため、まれに惑星による掩蔽も起こります。例えば、2400年11[[月17日]]には金星による掩蔽が確認されています。毎年12月初旬には、アンタレスの北側で太陽が通過しており、これも注目に値します。

名称

アンタレスという名前はギリシア語の「Άντάρης」に由来しており、「火星に拮抗する星」という意味を持っています。この名は火星と接近する際に、その赤い色と対照的に見えることから付けられたとされています。さらに、アンタレスには「さそりの心臓」を意味するラテン語の名称や、アラビア語の表現も存在します。

日本では「アカボシ」や、中国では「大火」または「火」と呼ばれ、その色と関連付けられています。古代の文献には、さそり座の特徴やこの星に関する様々な表現が見られます。

アンタレスと関連のある天体

• - IC 4606: アンタレスの周辺にあるHII領域で、赤く輝く星雲です。
• - Cr302: さそり座周辺の散開星団で、アンタレスを中心にした星々の集まりです。明るい星が多いですが、散開星団としてはあまり密度が高くありません。

このように、アンタレスは明るい恒星の一つとして、数多くの研究や観測の対象となっています。その壮大なサイズや美しい色合い、さらには豊富な神話や歴史を持つこの星は、宇宙の神秘を感じさせてくれます。

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