イオランタ

チャイコフスキーのオペラ『イオランタ』

『イオランタ』（原題: Иоланта）は、ピョートル・チャイコフスキーが作曲した全1幕のオペラであり、彼の最後のオペラ作品として知られています。作品番号は69。

概要

モデスト・チャイコフスキーがリブレットを手掛け、ヘンリク・ヘルツの戯曲『ルネ王の娘』を基に、ヨランド・ダンジューの生涯を物語として描いています。1892年12月18日にサンクトペテルブルクのマリインスキー劇場で初演され、全曲の演奏時間は約1時間40分です。

作曲の背景

『スペードの女王』完成後、チャイコフスキーは創作力の衰えを懸念しましたが、1891年に作曲を開始し、その懸念を払拭しました。初演は好評を博したものの、彼は過去の作品『チャロデイカ』との類似性に落胆したと伝えられています。

演奏史

初演後、1997年にはモスクワのボリショイ劇場などで2幕形式での上演が定着しました。ロシア国外では、1893年にハンブルクでグスタフ・マーラーの指揮により初演。その後、ウィーンやニューヨークでも上演され、2015年にはメトロポリタン・オペラで初の公演が行われました。

あらすじ

物語は15世紀の南フランスを舞台に、盲目の王女イオランタを中心に展開されます。

第1場

生まれつき目が見えないイオランタは、自分が王女であることを知らずに、外界から隔絶された庭で暮らしています。彼女は自身の悲しみと、何か大切なものを見逃している感覚に苦悩しています。父であるルネ王は、彼女の盲目が婚約者であるロベルト公爵に知られることを恐れています。

第2場

王の到着後、イオランタに光や父親の身分について話すことが禁じられます。ムーア人医師エブン＝ハキアは、イオランタの治療が可能だと述べますが、彼女が自身の盲目を認識し、精神的に準備ができた時にのみ治療が有効であると説きます。王は、治療が失敗した場合の不幸を案じ、治療を拒否します。

第3場

ロベルトと友人のヴォーデモン伯爵が宮殿に到着します。ヴォーデモンはイオランタの秘密の庭に侵入し、眠っている彼女に一目で恋をします。イオランタが目覚めると、ヴォーデモンは彼女に光と色について教え、二人は惹かれ合います。

第4場

二人は王に見つかり、ヴォーデモンはイオランタへの愛を誓います。エブン＝ハキアは、イオランタが盲目であることを知った今なら治療が成功するかもしれないと進言します。王はヴォーデモンを処刑すると脅し、イオランタに治療を受けさせようとします。彼女は恐れながらも治療に同意し、最終的に視力を回復します。新たな世界に戸惑いながらも、イオランタは喜びを歌い、宮殿は喜びに包まれます。

主要なアリアと楽曲

イオランタのアリオーソ: 「どうして私は前からこのことを知らなかったの」
エブン＝ハキアのモノローグ: 「2つの世界」
* ロベルトのアリア: 「誰を私のマチルダに比べられよう」

楽器編成

ピッコロ、フルート2、オーボエ2、コーラングレ、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、ハープ2、弦五部

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