イザイホー

イザイホー：久高島の神女就任儀礼

イザイホーは、沖縄県南城市の久高島で12年に一度、午年の旧暦11月15日から4日間にかけて行われる、久高島で生まれ育った30歳以上の既婚女性が神女となるための就任儀礼です。要件を満たす女性は基本的に全てこの儀礼を通過します。

概要

琉球王国時代、最高の聖域とされた久高島には「男は海人、女は神人」という言葉が伝わっていました。これは、男は成人して漁師に、女はイザイホーを経て神女になることを意味し、琉球王国の信仰基盤であるおなり神信仰を象徴するものでした。

イザイホーは、ニルヤカナヤ（ニライカナイと同様の他界概念）からの来訪神を迎え、新しい神女を認証してもらい、来訪神を送るという観念に基づいています。史料に残る限り600年以上の歴史を持ち、来訪神信仰の儀礼として日本の祭祀の原型を留めているとされ、多くの学者の関心を集めています。

1966年、1978年のイザイホーには、多くの民俗学者や取材陣が久高島に集まりました。

儀式の詳細

久高島の巫女集団は、久高家と外間家の2つから構成され、それぞれに最高職のノロがいます。補佐役には掟神がおり、さらにその下にタムト（61歳～70歳）、ウンサク（54歳～60歳）、ヤジク（42歳～53歳）という3階級の巫女グループが存在します。新しく参加する31歳以上の巫女はナンチュと呼ばれます。

祭礼前のひと月前から、ナンチュは島の七箇所の御嶽に参拝し、それぞれの神の名をもらいます。このとき、神々から巫女になるべき霊力（セジ／シジ）が授けられるとされています。

イザイホーは以下の様な内容で行われます。

夕神遊び（11月15日）: ナンチュの加盟儀式。ナンチュは神アシャゲと呼ばれる拝殿を旋回し、先輩巫女とともに神歌を歌い、奥の森に入ります。洗い髪のまま白衣をまとい、拝殿前の七つ橋を躓かずに渡ることが求められます。
カシラタレ遊び（11月16日）: ナンチュが洗い髪のまま三重の円陣を組み踊ります。
花差し遊び（11月17日）: ナンチュは巻き髪、鉢巻き、ウフジンの巫女の扮装になり、イザイ花と呼ばれる花飾りをつけ、祝詞を唱えながら旋回します。ここで、ナンチュは先輩の巫女と同等になります。
朱づけ遊び: 外間根人と呼ばれる男性が巫女とナンチュの額と両頬に朱印を付け、その後、ノロが額と頬に団子の粉を付け、正式に巫女の証明をします。
アリクヤーの綱引き（11月18日）: 巫女全員が男性と綱引きをし、ニライカナイからの神の降誕を歌います。
御家回い（グキマーイ）: ノロがナンチュを迎えに行き、ナンチュは家に帰り、家族から祝福を受けます。緑の葉の冠をかぶり、神と同等になったことを表します。
桶回い（ウケマーイ）: 巫女一同が再び集合し、桶に入った神酒をいただき、自然と神を賛美する歌を歌い、ニライの神を拝礼します。

儀式の最後は、カチャーシーと呼ばれる踊りによる打ち上げの宴会で締めくくられます。

現状と記録

近年、島の過疎化が進み、1990年、2002年、2014年はナンチュとなる女性の不在などにより、イザイホーは中止されています。1978年を最後に、2014年現在に至るまで行われておらず、その存続が危ぶまれています。

長い間秘祭とされてきたイザイホーですが、1978年の儀式は積極的に紹介され、記録映画が撮影されるなど、後世に残す試みがなされました。その結果、写真集や映画などが制作・公開されています。

写真集：『神々の島 沖縄久高島のまつり』、『イザイホー 沖縄・久高島』、『神々の原郷　久高島』
映画：『イザイホウ　神の島・久高島の祭祀』
記録映像：『沖縄久高島のイザイホー』（ウェブ公開）

2020年には、NHKの番組でイザイホーの記録映像が紹介されました。

イザイホーは、久高島の文化を象徴する重要な儀式であり、その存続が望まれています。

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