ウィルバート・オードリー

ウィルバート・オードリー：『きかんしゃトーマス』の生みの親

ウィルバート・ヴィア・オードリー (1911年6月15日 - 1997年3月21日) は、イギリスの牧師であり、世界的に有名な児童文学作家です。彼の名を不朽のものとしたのは、何と言っても『汽車のえほん』シリーズ。このシリーズは、テレビシリーズ『きかんしゃトーマス』の原作として、世界中の子供たちに愛され続けています。

幼少期から牧師への道

オードリーは、イングランドのハンプシャー州で、国教区牧師の父と母のもとに生まれました。幼い頃から、父と兄が製作した鉄道模型に魅せられ、鉄道への強い興味を持つようになりました。第一次世界大戦による兄の戦死という悲劇を経験した後、一家はウィルトシャー州に移住。そこで、グレート・ウェスタン鉄道の機関車の音に耳を澄ませ、機関車が意思を持って動いているように感じていたことが、後に『汽車のえほん』の創作へと繋がる重要な体験となります。

優秀な頭脳の持ち主だったオードリーは、オックスフォード大学で文学を学び、学位を取得。しかし、父の意志を継いで聖職の道を選び、神学も修めました。大学卒業後にはイスラエルで教職に就き、そこで後に妻となるマーガレットと出会います。帰国後、牧師となり結婚。1男2女に恵まれました。

『汽車のえほん』の誕生と執筆

1942年、息子のクリストファーが麻疹にかかった際、オードリーは、少年時代に想像した、意思と感情を持つ蒸気機関車たちの物語を語って聞かせました。この物語が、メモ書きから始まり、徐々に詳細な内容へと発展していったのです。妻マーガレットの強い勧めもあり、1945年、『三だいの機関車』が出版され、『汽車のえほん』シリーズの幕開けとなりました。

以降、ほぼ1年に1冊のペースで新作が刊行され、シリーズは拡大を続けました。挿絵は専門の画家が担当し、オードリーは物語の創作に専念。彼は保存鉄道のボランティア活動にも積極的に参加しており、その経験は作品に反映されています。例えば、タリスリン鉄道での失敗談は、『汽車のえほん』のエピソードとして描かれています。

1972年、『わんぱく機関車』を最後に、オードリーは一旦執筆を終了。しかし、『きかんしゃトーマス』のテレビシリーズ化に伴い、息子のクリストファーがシリーズを引き継ぎ、新たな物語が紡がれていきました。オードリー自身も、作品の中に牧師でありながら鉄道愛好家であるという自身のアイデンティティを巧みに織り込んでいます。

晩年と功績

『三だいの機関車』出版50周年には、イギリス国立鉄道博物館で記念展示会が開かれ、イギリス国鉄の機関車に彼の名が冠せられました。1996年には大英帝国4等勲士に叙勲されましたが、高齢のため授賞式には出席できませんでした。1997年、ストラウドの自宅で永眠。晩年を過ごした教会には、トーマスが描かれたステンドグラスが飾られています。また、タリスリン鉄道博物館には、彼の書斎が復元され、遺品が展示されています。

オードリーの功績は、『きかんしゃトーマス』という世界的な人気作品を生み出したことだけではありません。彼は、子供たちの想像力を刺激する物語を通じて、多くの喜びと感動を与え、人々の心に深く刻まれた作家として、その名は永遠に語り継がれていくでしょう。彼の作品は、世代を超えて読み継がれ、これからも世界中の子どもたちに夢と感動を与え続けることでしょう。

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