ウトロ

ウトロの概要

ウトロは北海道オホーツク総合振興局斜里郡斜里町に所在する地域で、漢字では「宇登呂」と表記されます。この名前はアイヌ語の「ウトゥルチクシ（Uturu-ci-kus-i）」に由来し、「その間を我々が通る場所」と解釈されています。岩と岩の隙間を通る細道が由来で、集落と浜を結ぶ舟運が行われていました。一方、ウトゥル単体は「その間」を意味します。

この地域は斜里市街地から国道334号を使って知床岬へ向かう途中にあり、約40キロの距離です。自動車で短時間でアクセスできるため、観光地としても知られています。ウトロ港では遊覧船が発着しており、周辺には温泉街であるウトロ温泉があります。また、カムイワッカ湯の滝や知床五湖への道道93号の入口近くに位置し、訪れる人々には多様な観光体験を提供しています。

アウトドアや自然の美しい景色が楽しめる場所でもあり、国道の東側の海岸は特に夕日を楽しむスポットとして人気があります。また、町の端には歴史的なチャシコツ崎（ウトロチャシ）跡が位置しており、2005年にはこの地でトビニタイ文化の遺跡から熊を祀っていた痕跡が発見され、アイヌ文化に関する重要な研究が進められています。

ウトロは知床観光の拠点としても役立っており、2007年には「道の駅うとろ・シリエトク」、2009年には「知床世界遺産センター」が開設されました。知床が世界遺産に登録されることで、観光収入の増加が見込まれる一方、訪問者の増加による影響も懸念されています。厳冬期には流氷が近海に流れ込むことで、多くの観光客が「流氷ウォーク」ツアーに参加します。さらに、運が良ければオジロワシなどの野生動物も観察できるかもしれません。

気候

ウトロは海洋性気候に分類されており、比較的冬が温暖であるのが特徴です。過去の最低気温は-20.9℃であり、夏の平均気温も23度前後と冷涼です。しかし、この地域は気候の変動が激しいため、一日の中で急激な温度変化が起こることも珍しくありません。冬の終わりから初夏にかけては、フェーン現象によって特に温度が急上昇することがあり、2010年の2月には深夜にも関わらず14.9℃が記録されたこともあります。一方、アメダス地点で見ると、傑出した降雪の多さから長く雪が残る傾向があります。2013年5月には57cmもの積雪が観測され、季節を感じさせる光景が広がります。

エゾシカ問題

ウトロの温泉街にはエゾシカが頻繁に出没し、その姿は地域住民にとってもすっかり日常となっています。しかし、近年シカが集落に接近してきており、農産物や家庭内の植物が被害を受ける事例が増加しています。シカによって発生する糞尿問題や道路での事故も懸念材料です。殺傷による駆除は効果が薄く、2006年には集落の周囲をフェンスで囲う方針が決まりました。この際には、高さ3m、3628mに及ぶフェンスが設置され、農業被害を防止する試みが行われました。影響を受けた農作物にはてんさいや小麦、馬鈴薯などがあり、1999年には7,200万円にも達する被害が発生しました。対策としてエゾシカ侵入防止柵を設ける工事も行われ、長期的な解決策が模索されています。

ウトロはその自然環境に恵まれた土地であり、観光資源が豊かですが、エゾシカ問題など様々な課題も抱えています。

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