エリック・ビショフ

エリック・ビショフ：プロレス界のカリスマと、その波乱万丈な人生

エリック・ビショフは、アメリカ合衆国を代表するプロレスのプロモーター、プロデューサーとして知られています。1955年生まれ。独特の企み事を思わせるような笑顔が特徴的な人物です。若い頃は空手や拳法の道場で鍛錬を積んだ経験を持ち、プロレスラーではありませんでしたが、必要に応じてリングに上がることもありました。現在では、ワイオミング州コーディで醸造会社を経営するなど、プロレスとは異なる分野で活躍しています。息子のギャレット・ビショフもプロレスラーとして活動しているという点も興味深いところです。

プロレス界での足跡：AWAからWCW、そしてWWEへ

ビショフのプロレス界でのキャリアは、AWAでの営業職から始まりました。1989年、代理でインタビュアーを務めたことがきっかけでテレビ出演を果たし、その後正式にインタビュアーに。しかし、1991年にAWAが活動を停止すると、WWEへの入団を目指しましたが叶わず、WCWに移籍。リングアナウンサーからスタートし、持ち前のビジネスセンスと手腕を発揮して、プロモーター、ブッカーへとキャリアをステップアップさせました。1993年にはWCW副社長にまで上り詰めました。

WCW在籍時には、1995年にWWFの『ロウ』に対抗する番組『マンデー・ナイトロ』を開始。視聴率戦争（マンデー・ナイト・ウォーズ）を仕掛け、WWFを圧倒的な勢いで追い詰めることに成功しました。WCWの潤沢な資金を武器に、WWFやECWから多くのスターレスラーを引き抜き、nWo（ニュー・ワールド・オーダー）という人気ユニットを結成。その人気は空前の大ブレイクを記録し、WWFを倒産寸前まで追い込むほどでした。

しかし、WCWはベテラン中心のストーリー構成、nWoメンバーの台頭による団体内の統制の乱れ、ストーリーのマンネリ化といった問題を抱えるようになります。これにより、多くのレスラーがWWFへ移籍し、WCWは徐々に求心力を失っていきました。WWFはストーン・コールド・スティーブ・オースチンとビンス・マクマホンの抗争などを展開して巻き返しを図り、WCWは窮地に立たされました。ビショフは1999年にWCWを解雇されましたが、半年後に復帰。しかし2001年、WCWは最終的に崩壊しました。

WCW崩壊後、ビショフはTV番組のプロデューサーを務めたり、インディー団体に関わったりしていましたが、2002年にWWEの『ロウ』のゼネラルマネージャー (GM) として電撃的にWWEと契約。これはファンや関係者を驚かせました。過去のWCWとWWEの抗争、レスラーの引き抜きと解雇といった印象が強かったため、GMとしてはヒール（悪役）として活躍しました。2005年のPPV、ECW ワン・ナイト・スタンドでは、反ECW義勇軍を率いて登場した際、多くのブーイングを浴びたほどです。

WWEのGMとしては、独裁的な運営で知られました。チーフ・モーリーやジョン・モリソンを補佐役につけ、高圧的な態度で臨んでいました。世界ヘビー級王座を創設したり、インターコンチネンタル王座を消滅させたり（後に復活）、過酷なデスマッチ形式「エリミネーション・チェンバー・マッチ」を考案するなど、WWEに大きな影響を与えました。2004年には来日し、さいたまスーパーアリーナで開催されたイベントにも参加しています。2005年12月にはGMを解任されましたが、その後も自伝出版やテレビ出演などでWWEに復帰しています。2007年にWWEを退団（ストーリー上は解雇）後、TNAと契約。2019年には再びWWEに復帰し、スマックダウン・エグゼクティブ・ディレクターに就任しました。2021年にはWWE殿堂入りを果たしました。

エリック・ビショフという人物像

ビショフは、ハルク・ホーガン、ケビン・ナッシュ、DDPなど、親しいレスラーを優遇し、高額な契約金を支払ったことから「ATMエリック」と呼ばれたこともありました。一方で、リック・フレアーとは不仲だったと伝えられています。かつてはビル・ゴールドバーグと共に、WWEに登場しない人物の筆頭に挙げられていたこともありましたが、ビンス・マクマホンは彼を雇った理由を「最高の復讐だ」と語っています。妻のローリー・ビショフは、アメリカの美人ランキングで上位に選ばれるほどの美女です。また、WCW在籍時にはK-1のイベントにも参加したことがあります。

プロレス界からの引退と新たな挑戦

現在はワイオミング州コーディに住み、ビール好きが高じて醸造会社を設立。バッファロー・ビルにちなんだビールを製造しています。プロレス界の頂点で活躍したのち、新たな分野で成功を収めている彼の生き様は、多くのファンに刺激を与え続けています。

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