オイルパン

オイルパン：エンジンの心臓を守るオイル溜め

自動車エンジンの正常な作動には、エンジンオイルの潤滑作用が不可欠です。オイルパンは、この大切なエンジンオイルを貯蔵し、保護する重要な部品です。エンジンブロックの下部に設置された、蓋のような形状をしています。

ウエットサンプ方式とオイルパンの役割

一般的な自動車エンジンは、ウエットサンプ方式を採用しています。この方式では、オイルパンがエンジンオイルの貯留槽としての役割を果たします。オイルパン内部には、オイルを溜めておくための窪み（サンプ）があり、エンジンオイルを効率的に貯蔵します。オイルパンの容量は、使用されるエンジンオイルの総量に直結するため、大排気量のエンジンほど、より大きなオイルパンが用いられる傾向があります。

さらに、オイルパンは走行風によるエンジンオイルの冷却にも貢献します。また、オイルパンに溜まったオイルは、オイルストレーナーとオイルポンプによって吸い上げられ、オイルフィルターを通過した後、エンジン内部へと送られます。オイル交換時には、オイルパン下部にあるドレインプラグを外してオイルを排出する「下抜き」を行います。オイルレベルゲージもオイルパンに接続されており、オイル量の確認が容易です。

オイルパンは、衝撃による破損を防ぐため、通常はプレススチール製で作られます。しかし、スポーツカーやターボ車など、高性能なエンジンを搭載する車両では、アルミ合金製のオイルパンが採用されることもあります。アルミ合金製オイルパンは、軽量で放熱性に優れているため、オイルクーラーとの併用によって、より効果的な冷却を実現します。

ウエットサンプ方式の欠点とドライサンプ方式

ウエットサンプ方式は、構造がシンプルでコストが低いというメリットがある一方で、いくつかの欠点も存在します。

1. エンジンの設計自由度を制限する: オイルパンがある程度以上の高さを必要とするため、エンジンの設計や配置に制約が生じます。
2. オイルの偏り: 加速度によってオイルパン内のオイルが偏り、オイルポンプがオイルを吸い上げにくくなる可能性があります。

これらの欠点を克服するために、モータースポーツや一部の市販オートバイ、航空機エンジンなどでは、ドライサンプ方式が採用されています。ドライサンプ方式では、オイルパンを使用せず、オイルタンクとオイルポンプを別々に配置することで、オイルの偏りを抑制し、エンジンの設計自由度を高めます。ウエットサンプ方式のオイルパンには、コーナリング時のオイル偏りを防ぐための仕切り板が追加される場合もあります。

オイルパンと関連部品

オイルパンは、オイルポンプ、オイルフィルター、オイルレベルゲージなど、他のエンジン部品と密接に連携して機能します。これらの部品は、エンジンの潤滑と冷却に不可欠な役割を果たしています。オイルパンの役割を理解することで、エンジンの仕組みをより深く理解することができます。

まとめ

オイルパンは、一見すると目立たない部品ですが、エンジンオイルを保護し、エンジンの正常な作動を支える上で非常に重要な役割を担っています。その構造や材質、そしてドライサンプ方式との比較を理解することは、自動車エンジンの仕組みを理解する上で非常に有益です。

もう一度検索