オージー・ビーフ

オージー・ビーフ（Aussie Beef）とは

オージー・ビーフは、オーストラリア産の牛肉の総称です。オーストラリアは世界でも有数の牛肉輸出国であり、日本をはじめとする多くの国々に牛肉を輸出しています。日本では、スーパーマーケットなどで一般的に販売されており、輸入牛肉市場において重要な位置を占めています。主にアメリカ産牛肉と並んで、食卓に欠かせない存在となっています。

オージー・ビーフの概要

オージー・ビーフの原料となる肉牛は、広大な牧草地で放牧されて育ちます。その後、輸出先のニーズに合わせて、穀物を飼料として与える「グレイン・フェッド」という飼育方法も普及しています。2018年12月の統計では、日本に輸出された冷蔵牛肉の約74%がグレイン・フェッドによるものでした。一方で、輸入統計全体を見ると、オーストラリア産牛肉の多くは牧草で飼育されています。

オージー・ビーフの歴史

オーストラリアでの牛の飼育は、1788年1月に南アフリカから2頭の雄牛と6頭の雌牛がシドニーに持ち込まれたことに始まります。これがオージー・ビーフのルーツとされています。

生産方法

農場での飼育

オーストラリアでは、国土の約47%が農業経営者によって管理されており、そこでは約2800万頭の牛と約7400万頭の羊が飼育されています。放牧された牛は、牧草を食べて育ちます。このように牧草のみで育った牛は「牧草牛」や「グラス・フェッド」と呼ばれ、赤身が多いのが特徴です。グラスフェッドビーフは、主に冷凍で日本に輸入され、ハンバーグなどの加工食品の原料として利用されています。冷蔵で輸入されるグラスフェッドビーフは、牧草牛やオーガニックビーフが中心です。

フィードロット（肥育場）での飼育

穀物を与えて育てる牛は、出荷前に大麦や小麦などの穀物を飼料として与えられます。この飼育方法で育てられた牛肉を「グレイン・フェッド」と呼びます。オージー・ビーフはグラスフェッドが中心と思われがちですが、それは加工原料やオーガニックビーフを含めた場合であり、日本を含むアジア市場向けに輸出される牛肉の多くは、グレイン・フェッドです。

特に日本を含むアジア市場では、牛肉の霜降り（サシ）が好まれるため、フィードロットと呼ばれる肥育場に牛を移動させて、グレイン・フェッドが行われます。グレイン・フェッドは、短期間で効率的に牛を肥育できる方法です。この方法はアメリカ産牛肉と同じですが、飼料の内容には違いがあります。アメリカでは遺伝子組み換えの飼料用コーンが中心であるのに対し、オーストラリアでは遺伝子組み換えされていない大麦や小麦が中心です。また、肥育期間によって、ロングフェッド、ミドルフェッド、ショートフェッドに分類されます。

加工と流通

オーストラリアの牛肉加工工場は、輸出をメインに設計されており、衛生管理が行き届いています。そのため、チルド状態でも品質保証を100日に設定する生産者もいます。イスラム教の市場向けにハラール対応の加工が行われる場合もありますが、日本に流通する際には、特に意識されることはありません。

日本向けの牛肉は、主に船便で輸送されます。冷凍と冷蔵の両方で輸入されますが、冷凍のものは主にハンバーガーパティなどの加工原料として、冷蔵のものはスーパーマーケットの精肉売り場で販売されます。統計上、冷凍の加工原料の割合が多いため、「オージー・ビーフは牧草で育てられている」という誤解が生じやすいですが、スーパーマーケットで販売されているものの多くはグレイン・フェッドです。

外食産業におけるオージー・ビーフ

日本マクドナルドをはじめとする多くのファーストフードチェーンでは、ハンバーガー用の牛肉としてオーストラリア産を採用しています。2003年にアメリカ産牛肉の牛海綿状脳症（BSE）問題が発生し、輸入が禁止された際も、オージー・ビーフは牛丼とは異なり、ほとんど影響を受けませんでした。

牛丼チェーンのすき家やなか卯では、オーストラリア産だけでなく、アメリカ産牛肉も使用しています。吉野家では、以前からアメリカ産牛肉を主に使っていましたが、穀物で育てたオーストラリア産の牛バラ肉も使用しています。ただし、吉野家で使用する牛肉全体の内、オーストラリア産の割合は、牛丼の販売休止前には1%程度、販売再開後は10%程度です。

安全管理体制

オーストラリアは、固有の生態系を保護する目的と、食肉輸出産業を基幹産業としていることから、厳格な検疫体制を敷いています。BSEなどの深刻な問題は発生していません。個々の牛については、電子タグで移動履歴をデータベース化し、管理しています。

日本への輸出

日本への牛肉の輸入は戦後間もなく始まり、当初は割り当て制でしたが、1991年に輸入が自由化されました。BSE問題でアメリカ産牛肉の輸入が禁止された際には、輸入牛肉のほとんどをオーストラリア産が占めるようになりました。2004年にアメリカ産牛肉の輸入が再開されると、オーストラリア産の割合は半数強に減りましたが、その後もアメリカ産やウルグアイ産と共に重要な輸入先となっています。

中国への輸出

2010年代後半から、オーストラリアと中国の関係が悪化する中、2020年5月、中国政府はオーストラリアの大手牛肉輸出業者からの輸入を停止しました。これは、オーストラリアが新型コロナウイルスの発生源調査を要求したことに対する報復措置であるとされています。

出典

MLA豪州食肉家畜生産者事業団
国立国会図書館　資料請求記号：DM456-J16 　「ビーフ産業の研究」 　-オーストラリアンビーフのすべて-

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