ガイノイド

ガイノイドとは

ガイノイド（gynoid）とは、人間の女性に似せて作られた人型ロボット（ヒューマノイド）のことです。より具体的には、女性のアンドロイドを指す言葉として用いられます。「女性」を意味するギリシア語の「γυνη（gynē）」に由来し、英語圏では「fembot（フィーメイルロボット）」という言葉も同様の意味で使用されます。

形態

ガイノイドの形態は、極めて精巧に人間の女性の外観を模したものから、表面が金属で覆われた機械的な外観のものまで、多岐にわたります。SF作品などでは、美少女アンドロイドとして描かれることも多く、外見からは人間と区別がつかないほど精巧なものも存在します。

実現性

近年、ロボット技術の発展により、ガイノイドの実現性は徐々に高まっています。2005年の愛・地球博では、女性型ロボット「アクトロイド」がコンパニオンとして展示され、注目を集めました。また、産業技術総合研究所では、女性型ロボット「HRP-4C」が開発されるなど、研究開発も進んでいます。

ガイノイドの用途としては、受付や案内、介護、接客など、ヒューマンインターフェースとしての活用が想定されています。人間と自然なコミュニケーションを行うことができるガイノイドは、様々な分野での活躍が期待されています。

フィクションにおけるガイノイド

人工的な女性は、古くは古代ギリシャ神話にも登場し、SF作品を中心に様々なフィクションに登場します。巽孝之によれば、ガイノイドの概念は、ギネス・ジョーンズの小説『聖なる堅忍』（1984年）で確立されたと考えられています。また、巽は、アンドロイド（男性型ロボット）が語源的に家父長制的な意味合いを持つことに対し、ガイノイドは疑問やアンチテーゼとしての意義を持つと指摘しています。

SF作品における女性型ロボットは、使用人や性的奴隷として扱われることも少なくありません。映画『ウエストワールド』、ポール・J・マコーリイの小説『フェアリイ・ランド』、レスター・デル・レイの短編『愛しのヘレン』、士郎正宗の漫画『攻殻機動隊』などに、その描写が見られます。

また、アニメ作品やアダルトゲームなどの成人向けコンテンツにも、ガイノイドは数多く登場します。例として『To Heart』のマルチが挙げられます。

コメディ映画『オースティン・パワーズ』シリーズには、胸に武器を内蔵した美女型ロボット「フェムボット」が登場しますが、主人公によって破壊されるのがお約束となっています。

フェミニストによる比喩

ガイノイドは、フェミニズムの文脈において、女性の身体的な制約からの解放や、再生能力への期待を象徴する比喩として用いられることがあります。巽孝之は、エレイン・ショウォーターの女性文化批評や、アリス・ジャーディンのガイネーシスとの関連性を指摘しています。

一方で、「fembot」という言葉は、女性を侮辱する表現として用いられることもあります。

参考文献

Carpenter, J., Davis, J., Erwin‐Stewart, N. Lee. T., Bransford, J. & Vye, N.（2009）. Gender representation in humanoid robots for domestic use. [International Journal of Social Robotics（special issue）]. The Netherlands: Springer.
Jordana, Ludmilla（1989） Sexual Visions: Images of Gender in Science and Medicine between the Eighteenth and Twentieth Centuries. Madison, Wis.: University of Wisconsin Press. ISBN 0-299-12290-5
Leman, Joy（1991） "Wise Scientists and Female Androids: Class and Gender in Science Fiction." In, Corner, John, editor. Popular Television in Britain. London: BFI Publishing. ISBN 0-85170-269-4
Jon Stratton, The desirable body: cultural fetishism and the erotics of consumption, University of Illinois Press, 2001, ISBN 9780252069512.
Patricia Melzer, Alien Constructions: Science Fiction and Feminist Thought, University of Texas Press, 2006, ISBN 9780292713079.
Stratton, Jon (2001). The desirable body: cultural fetishism and the erotics of consumption. US: University of Illinois Press. ISBN 9780252069512 
巽, 孝之「ガイノイド宣言」『現代SFのレトリック』岩波書店、1992年、204-224頁。ISBN 4-00-000620-7。

関連項目

サイボーグ
ヒューマノイド
人造人間（アンドロイド）

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