キアゲハ

キアゲハ（Papilio machaon）

キアゲハはアゲハチョウ科に属する蝶で、ユーラシア大陸や北米北西部を広く分布しています。日本ではナミアゲハと並び多くの場所で観察される人気の種類で、アゲハチョウ属のタイプ種に指定されています。

形態と生態

成虫の大きさは翼を広げた時に約9cm、前翅の長さは4cmから6cm程度です。ナミアゲハと外見が似ていますが、キアゲハの前翅の根元は黒色が強く、三角の模様が明確に見られるため区別が可能です。さらに、翅の中部には細い黒い線があり、 黄色みの強い色彩も特徴的です。

成虫は4月から10月にかけて活動し、年に2回から4回発生します。生息地は多様で、海岸の植物から高山の植物まで幅広いセリ科植物を食草とするため、都市部や農村、山地、さらには高山地帯でも見られます。雄の成虫は特有の香りを放ち、その成分にはリナロールやゲラニルアセトン、n-ドデカンが含まれています。

幼虫はセリやハマウド、シシウドなどのセリ科植物や、ニンジンやミツバ、アシタバなどの様々な野菜も食べます。都市部でも家庭菜園適した環境があれば、成虫が産卵し、幼虫を見ることが可能です。時折、キハダやみかんなどのミカン科植物に幼虫が見られることもあり、さらにアゲハチョウ科全体の食性に関する研究の重要な指標を提供しています。幼虫は三齢まではナミアゲハ同様の保護色を持ち、四齢以降は警戒色へと変わります。

冬季は蛹の状態で越冬します。

分布

キアゲハはヨーロッパ、アジア、北米の北西部にまで広く分布しており、その中にいくつかの亜種が存在します。日本では亜種P. m. hippocratesが見られ、この亜種は時に別の種と見なされ、特に日本産はP. hippocratesとされています。北アメリカにはアメリカキアゲハ（Papilio zelicaon）という似た種類も存在し、英語ではこの二種を区別してキアゲハを「Old World Swallowtail」と称しています。

ギャラリー

キアゲハの美しい姿や生活環境を記録した画像や観察情報は、自然観察や教育の場で重要な役割を果たしています。

参考文献

• - 猪又敏男編・解説、松本克臣写真 『蝶』 山と溪谷社
• - 森上信夫・林将之 『昆虫の食草・食樹ハンドブック』 文一総合出版
• - 白水隆・原章 共著『原色日本蝶類幼虫大図鑑VOL.Ⅰ』保育社
• - 福田晴夫 他8名 共著『原色日本蝶類生態図鑑(I)』保育社

関連項目

• - ナミアゲハ
• - セリ科

キアゲハはその美しさや生態の多様性から多くの人々に愛されています。

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