キアサージ級戦艦

キアサージ級戦艦

キアサージ級戦艦は、アメリカ海軍が建造した戦艦の艦級であり、ネームシップのキアサージは、アメリカ海軍の戦艦において唯一、州の名が命名されなかった艦として知られています。

特徴的な艦形

キアサージ級の最大の特徴は、その独特な砲配置にあります。主砲である13インチ35口径連装砲の砲塔の上に、8インチ35口径の中間砲を2階式に積み重ねるという、他国には全く類を見ない構造を採用しました。この配置は、副砲にも主砲と同じ広い射界を与えることができ、8門の砲塔を4門に削減できるため、重量や人員配置の面で大きな利点がありました。また、火薬庫の防御を強化し、居住区を広く確保できるというメリットもありました。

しかし、この特異な配置には欠点も多く、中間砲の発射時に主砲への爆風干渉が発生する、中間砲が主砲と同じ目標しか狙えない、砲塔が重くなり動力装置が複雑化して故障しやすい、中間砲の揚弾装置に問題があるなど、多くの課題がありました。他国からはその実現性を疑問視され、アメリカ海軍内部でも議論が絶えませんでしたが、利点に着目し、欠点を技術で克服するという方針が採用されました。

実際に運用された結果、欠点が露呈しましたが、アメリカ海軍は技術改良によってこれらの問題の解決を試みました。そして、この経験は後のバージニア級戦艦にも引き継がれました。バージニア級でもこの配置は成功しませんでしたが、試行錯誤の結果、後部砲塔を前部砲塔よりも高い位置に配置すること、そして全ての砲の口径を統一することが最適であるという結論に達しました。

これらの経験から、現代でも最適な配置とされる「統一された大口径主砲を、全て中心線上に背負い式で持つ」という条件を世界に先駆けて満たしたサウスカロライナ級戦艦へと繋がっていきました。

「チーズボックス」砲塔

キアサージ級は、「チーズボックス」と呼ばれる小型の砲塔を装備した最後の艦級でした。この砲塔は、南北戦争時にジョン・エリクソンが設計したモニター式砲塔の直系の子孫とも言えるものでした。この「チーズボックス」砲塔は後部に砲が装備されており、砲の仰角を得るためには大きく脆弱な開口部が必要となり、砲の最大仰角も制限されるという問題点がありました。キアサージ級以降の艦では、箱型の「イギリス式」砲塔が採用され、防御性能が向上し、より効率的な運用が可能になりました。

その後

キアサージ級の2隻は、ワシントン海軍軍縮条約の結果、削減されることになりました。一番艦キアサージはクレーン船に改造され、1955年に除籍されるまで使用されました。二番艦ケンタッキーは廃棄処分となりました。

同型艦

キアサージ (USS Kearsarge, BB-5)
ケンタッキー (USS Kentucky, BB-6)

参考文献

* 福井静夫『日本戦艦物語（I）』光人社 ISBN 4-7698-0607-8

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