クリー

クリー族 (Cree)

クリー族は、北アメリカ大陸に広く居住する先住民族であり、特にカナダでは「ファースト・ネイション」と呼ばれる先住民族の集団の中でも最大規模の一つとして知られています。その人々は、カナダの広大な地域とアメリカ合衆国の一部に分散して暮らしています。

居住地域

カナダ国内では、オンタリオ州のスペリオル湖周辺地域を中心に、マニトバ州、サスカチュワン州、アルバータ州といった西部平原地域、さらにはケベック州や北部のノースウェスト準州といった広大な範囲にその居住地が広がっています。これらの多様な環境に暮らすクリー族の人々は、カナダ全体でおよそ20万人を数えます。一方、アメリカ合衆国においては、かつてスペリオル湖の西岸地域にも多く暮らしていましたが、現在ではその大多数がモンタナ州にある居留地に移り住み、同じアルゴンキン語族のオジブワ族と共に生活を営んでいます。

言語

多くのクリー族の人々は、アルゴンキン語族に属するクリー語を話します。しかし、広大な地域に分散しているため、地域によって様々な方言が存在し、その中には互いに理解が難しいほど異なるものもあります。クリー族の人々が自らを指す言葉は「ネヒラウェ（Nēhilawē）」であり、「我々の言葉を話す人」を意味します。「クリー」という名称は、ヨーロッパ系の入植者（英語やフランス語を話す人々）とコミュニケーションをとる際に用いられる外名です。

多様なグループ

クリー族は、地理的な分布や文化的な特徴に基づき、一般的に八つの主要なグループに分類されます。これらのグループは、それぞれ独自の歴史や伝統、生活様式を持っています。

ナスカピ族とインヌ族: 彼らが「ニタシナン」と呼ぶ土地、現在のケベック州東部とラブラドール地方に居住しています。このグループ内でも、ナスカピ族はカリブー（トナカイ）狩猟を中心としたより遊牧的な生活を送り、一方のインヌ族（特にモンターネ族）はナスカピ族に比べて定住の度合いが高いなど、文化的な違いが見られます。2003年時点での人口は約1万8000人で、うち約1万5000人がケベック州に暮らしています。このグループが話すクリー語方言は、スペリオル湖より東に居住する他のクリー族の方言と比べて最も差異が大きいとされています。
アティカメク族: ケベック州サンモーリス川上流、モントリオールから北へ約300km離れた場所にある彼らの土地「ニタスキナン（我が土地）」に暮らしています。人口はおよそ4500人です。
ジェームズ湾クリー族: ジェームズ湾沿岸部およびケベック州北部、ヌナビク地区に居住するグループです。約1万6400人の人々がおり、海岸地域で話される方言（Iyyu）と内陸地域で話される方言（Iynu）があります。彼らはクリー族評議会（Grand Council of the Crees）に属しています。
ムース・クリー族: オンタリオ州のコクレーン地区にあるムースファクトリーを拠点としています。ジェームズ湾の南端に位置するムース川の河口にあるムースファクトリー島に主に居住しています。
スワンピー・クリー族: マニトバ州北部のハドソン湾沿岸部とその南側・西側に隣接する内陸部、およびオンタリオ州のハドソン湾やジェームズ湾沿岸部に分布しています。サスカチュワン州東部のカンバーランド・ハウスにも一部の人々が暮らしています。約4500人がスワンピー・クリー語を話します。
森林クリー族: アルバータ州北部からサスカチュワン州にかけての森林地帯に居住するグループです。
* 平原クリー族: カナダのプレーリー地方（マニトバ、サスカチュワン、アルバータ各州）からアメリカ合衆国のモンタナ州にかけて広がる広大な地域に分布しています。人口は約3万4000人で、クリー族の中でも特に大きな集団の一つです。歴史的には、広大な平原でアメリカバイソン（バッファロー）を狩猟することを主な生業とし、馬を巧みに操る騎馬民族として知られていました。18世紀にフランス系入植者と接触する以前は、同じ平原に暮らすアシニボイン族やソートー族などと同盟関係を結んでいました。

まとめ

クリー族は、北米大陸の広大な土地に分散し、それぞれの地域の自然環境や歴史的背景に適応しながら多様な文化を発展させてきた、非常に大きな先住民族の集団です。単一のまとまりではなく、地域ごとに異なる言語、文化、生活様式を持つ多様なグループの集合体であり、その豊かな多様性こそがクリー族の特徴と言えるでしょう。

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