ケプラー1649c

ケプラー1649cは、地球からおよそ300光年離れた、はくちょう座の領域に位置する太陽系外惑星です。この惑星は、主星である赤色矮星ケプラー1649の周囲を公転しており、その大きな特徴として、地球と比較してサイズと表面温度が非常に近いことが挙げられます。この類似性から、現在発見されている太陽系外惑星の中でも特に地球に似ている天体の一つとして注目されています。

この惑星の発見は、アメリカ航空宇宙局（NASA）が運用していた宇宙望遠鏡「ケプラー」が、恒星の手前を惑星が通過する際に生じるわずかな光の変化（トランジット法）を観測したデータに基づいています。ケプラー望遠鏡は多くの観測データを収集しましたが、その中には惑星の通過によるものと見間違える「偽陽性」の信号も含まれていました。ケプラー1649cの存在を示す兆候は、ケプラーの初期の観測データ中にすでに含まれていましたが、当時のコンピューターによる自動分析では偽陽性として分類され、見過ごされていました。

しかし、偽陽性データの中に隠された真の惑星信号を探し出すため、NASAが開発した高度な分析アルゴリズム「Robovetter」を用いた再解析が、ある研究チームによって行われました。この徹底的な検証作業の結果、2020年にケプラー1649cの存在が確認されたのです。この発見を率いたテキサス大学の研究者、アンドリュー・ヴァンダーバーグ氏は、論文の中で「この成果は、自動化された技術が進歩してもなお、人間が候補天体を詳細に調査することの重要性を示している」と述べており、発見の舞台裏にある人間の専門知識の価値を強調しています。

ケプラー1649cの物理的な特徴を見ると、その直径は地球の約1.06倍と、サイズが極めて類似しています。このサイズから、地球と同様に岩石を主成分とする地球型惑星である可能性が高いと考えられています。主星ケプラー1649の周囲を約19.5日という比較的短い周期で公転しており、その軌道は主星の「ハビタブルゾーン（生命居住可能領域）」内に位置すると推定されています。計算によると、表面の平衡温度は約234ケルビン（摂氏マイナス39度）と見積もられており、主星から受け取るエネルギーの量は地球が太陽から受け取る量の約75%にあたります。このエネルギー量と推定される温度から、惑星の表面に液体の水が存在しうる環境である可能性が示唆されています。

NASAの専門家たちは、サイズが地球に近い太陽系外惑星としてTRAPPIST-1fやティーガーデン星c（サイズは計算値）などが、温度が地球に近い惑星としてTRAPPIST-1dやTOI-700 dなどが知られている一方で、ケプラー1649cのように、サイズ、温度、そしてハビタブルゾーン内の公転軌道という複数の要素において、これほど地球に酷似している太陽系外惑星は他に類を見ない、と指摘しています。

ただし、この惑星の居住可能性については未だ不確定な要素も多く存在します。主星であるケプラー1649は赤色矮星であり、このようなタイプの星の中には、強いフレア活動（閃光星）を示すものが多いことが知られています。もしケプラー1649が活発なフレアを発生させる場合、たとえハビタブルゾーン内にあっても、放出される高エネルギー粒子によって惑星の大気が急速に剥ぎ取られてしまうリスクがあります。惑星の表面に液体の水を維持するためには、適切な大気の組成や厚さが不可欠です。もし大気が失われる、あるいは適切な組成でない場合、その表面環境は地球上の生命体にとっては非常に厳しいものとなる可能性があります。したがって、現時点ではケプラー1649cに大気が存在するか、またその組成や厚さがどのようになっているかが不明なため、この惑星が実際に生命が存在しうる環境であるかどうかの最終的な評価は難しい状況です。今後の観測によって、大気の有無や詳細な性質が明らかになることが期待されています。

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