コールドチェーン

コールドチェーン：低温物流が変えた食生活と医療

コールドチェーン（Cold chain）とは、生鮮食品や医薬品を生産から消費まで、途切れることなく低温で管理する物流システムです。日本語では「低温流通体系」とも呼ばれ、食品の鮮度保持や医薬品の品質維持に不可欠な技術として、現代社会に欠かせない役割を担っています。

コールドチェーンの進化：技術革新と社会情勢

コールドチェーン技術の確立以前は、食品の輸送は常温で行われるのが一般的でした。そのため、流通範囲は限られ、保存期間も短かったと言えるでしょう。寿司や鮮魚料理などは、コールドチェーン技術の普及によって、その形態を大きく変えました。全国、いや世界中への流通が可能になったのです。

アメリカでは第二次世界大戦後、冷蔵庫の普及が冷凍[[食品]]の流通拡大を促しました。日本もこの流れを受け、1950年代後半からの高度経済成長期に冷凍[[食品]]の需要が急増します。1959年には食品衛生法に基づく冷凍[[食品]]の規格基準が定められ、マイナス15度以下の保管が義務化されました。さらに1965年には科学技術庁主導で「コールドチェーン勧告」が発せられ、流通ネットワークの整備が本格的に進みました。1975年には保管温度がマイナス18度に改定され、今日の低温流通システムが確立されたと言えるでしょう。

家庭用冷蔵庫の普及も、コールドチェーンの発展に大きく貢献しました。1960年代からの冷蔵庫普及によって、冷凍[[食品]]は業務用から家庭用へと利用範囲が広がっていきました。

生鮮食品におけるコールドチェーン：鮮度保持の重要性

生鮮食品のコールドチェーンでは、収穫後すぐに低温貯蔵を行い、温度管理された輸送・貯蔵・仕分けを通して品質劣化を最小限に抑えます。冷却方法や温度変化の少ない物流システムの開発が、鮮度保持に不可欠です。マグロやカツオなどは、漁獲後すぐに船上で急速冷凍され、凍結状態で市場や小売店に届けられます。急速冷凍は、氷結晶の成長による細胞破壊を防ぎ、食材の風味を保つために非常に重要です。逆に、氷結晶の成長を利用したのが、高野豆腐や寒天などのフリーズドライ技術です。

コールドチェーンの応用と発展：宅配と医薬品への展開

1980年代後半からは、ヤマト運輸のクール宅急便など、温度管理された宅配サービスが登場し、通信販売などへの応用が進みました。また、ワクチンなどの医薬品輸送にもコールドチェーンは不可欠です。低温流通の確立により、医薬品の国際貿易や国内配送が安全に可能になりました。

保管温度帯と主要メーカー

コールドチェーンには様々な温度帯がありますが、厳密な区分は必ずしも統一されていません。一般的には、チルド（0～10℃）、冷凍（-18℃以下）、超低温（-40℃以下）などに分類されます。倉庫業法でも独自の温度区分が定められています。

コールドチェーンシステムを支える主要メーカーとして、東プレ、菱重コールドチェーン、デンソー、ダイキン、東光冷熱エンジニアリング、キャリア、サーモキング、FRIGOBLOCK、ゼクセルなどが挙げられます。これらの企業は、車載式空調機やリーファコンテナ用の空調機などを開発・製造し、コールドチェーン技術の発展に貢献しています。

コールドチェーンの未来：持続可能性への取り組み

現代社会において、コールドチェーンは食料供給や医療の安定供給に不可欠なインフラです。今後は、環境負荷の低減や省エネルギー化、デジタル技術を活用した効率化などが求められています。持続可能なコールドチェーンシステムの構築が、これからの課題と言えるでしょう。

もう一度検索