ゴッホ美術館

ゴッホ美術館：フィンセント・ファン・ゴッホの生涯と芸術を辿る

ゴッホ美術館（Van Gogh Museum）は、オランダのアムステルダムに位置する、フィンセント・ファン・ゴッホの作品を専門とする国立美術館です。この美術館は、ゴッホの作品群を世界最大規模で所蔵しており、彼の芸術的な生涯を深く理解するための重要な場所となっています。

コレクション

美術館の中心は、フィンセント・ファン・ゴッホ（1853年-1890年）の作品です。油絵約200点、素描約500点、そしてゴッホ自身が書いた約700通の手紙が収蔵されています。これらの作品は、彼の芸術的な変遷をたどる上で不可欠なものです。

また、同時代の画家であるポール・ゴーギャンやロートレックの作品も展示されており、ゴッホがどのような芸術的環境に身を置いていたのかを知ることができます。さらに、ゴッホが強く影響を受けた日本の浮世絵も多数所蔵されており、彼の作品にみられる日本的な要素を探る上での手がかりとなります。ミレーの作品も展示されており、ゴッホがどのように模写を通して技術を磨いたのかを垣間見ることができます。

ゴッホ作品の真贋鑑定を行う世界的権威としての側面も持ち、SOMPO美術館所蔵の「ひまわり」やウッドワン[[美術館]]の「農婦」を真作と鑑定しています。美術館は、ゴッホ個人の美術館という枠にとどまらず、19世紀を中心とした近代美術全般の研究・展示機関としての役割も果たしています。

館内には、ファン・ゴッホに関する2万4千冊以上の書籍を収蔵する図書室が併設されており、来館者は自由に閲覧することができます。これは、ゴッホの研究や新たな創作活動を支える重要な資源となっています。

歴史

ゴッホ美術館は、1973年に国立美術館として開館しました。美術館の基となったコレクションは、ゴッホの弟であり経済的・精神的な支援者であったテオドルス・ファン・ゴッホ（テオ）とその妻ヨハンナ・ファン・ゴッホ＝ボンゲルが所有していたものです。テオ夫妻の死後、コレクションは彼らの息子であるフィンセント・ウィレム・ファン・ゴッホに受け継がれました。甥のフィンセントは、伯父の作品をまとめて保存したいという強い願いを持ち、その思いが美術館設立へと繋がりました。

オランダ政府やアムステルダム市などの協力のもと、1962年にファン・ゴッホ財団が設立され、財団が作品を買い上げたり寄贈を受けたりしました。現在の美術館は、財団がコレクションを国立美術館に永久寄託する形で運営されています。

美術館は国立と名乗っていますが、実際には「国立美術館自立法」に基づき、国が出資した財団法人によって運営されています。

建築

美術館は、本館と別館から構成されています。本館は、常設展の会場であり、ヘリット・リートフェルトによって設計されました。直線的なデザインが特徴で、前衛的な印象を与えます。一方、別館は、特別展や浮世絵の展示に用いられ、黒川紀章によって設計されました。曲線が多用されたデザインが特徴で、非対称の美しさを表現しています。

別館の建設には、日本の損害保険会社である損保ジャパンが、国際交流基金を通じて資金を提供しました。

ロケーション

美術館は、アムステルダムのミュージアム広場に面しており、アムステルダム国立美術館やアムステルダム市立美術館が近くにあります。そのため、芸術鑑賞には非常に便利なロケーションとなっています。

主な収蔵作品

ゴッホ美術館には、以下のようなゴッホの代表的な作品が収蔵されています。

畑で仕事をする農夫（1883年）
フェルトの帽子をかぶった自画像（1887年）
日本趣味（広重『江戸百景』より）（1887年）
キャンヴァスの前の自画像（1888年）
種まく人（1888年）
野菜畑（1888年）
黄色い家（1888年）
ファン・ゴッホの寝室（1888年）
荒れ模様の空と畑（1890年）
カラスのいる麦畑（1890年）

また、浮世絵コレクションには、歌川広重の「五十三次名所図会」や「江戸名所百景」、歌川国芳の「東海道五十三対」などが含まれています。

その他の情報

2019年1月24日、美術館は所蔵する「ひまわり」について、修復作業の結果、作品が非常に壊れやすい状態であることが判明したため、今後は貸し出しを行わないと発表しました。この作品は世界に現存する5作品のうちの一つであり、美術館が所蔵している貴重なものです。

ゴッホ美術館は、ファン・ゴッホの生涯と芸術を深く理解し、19世紀美術の知識を深める上で、非常に重要な場所です。アムステルダムを訪れる際には、必ず立ち寄りたい美術館の一つです。

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