サハリン2

サハリン2プロジェクト：ロシア極東のエネルギー開発

サハリン2プロジェクトは、ロシアのサハリン州北東部沿岸に位置する石油・天然ガス鉱区の開発プロジェクトです。オペレーターはサハリン・エナジー社が務めています。このプロジェクトは、ロシア初の液化天然ガス（LNG）プラント建設を伴い、ロシアのエネルギー政策において重要な意味を持ちます。しかし、その開発は環境への影響という側面も抱えています。

プロジェクトの概要

サハリン2プロジェクトの鉱区は、サハリン島北東部沖のオホーツク海に位置し、推定可採埋蔵量は原油約11億バーレル、天然ガス約18兆立方フィートとされています。鉱区は主にピルトン・アストフスコエ鉱区とルンスコエ鉱区に分かれており、前者は主に石油、後者は天然ガスが埋蔵されていると考えられています。

主要な施設

ピルトン-アストフスコエ-Aプラットフォーム（モリクパック、PA-A）: カナダから移送された可動式掘削装置で、原油とガスを生産しています。
ルンスコエ-A（Lun-A）: 天然ガスと液体（水とコンデンセート）、石油を生産するプラットフォームです。
ピルトン-アストフスコエ-Bプラットフォーム（PA-B）: ピルトン地区に位置し、原油とガスを生産しています。
陸上処理施設: ルンスコエとピルトン-アストフスコエからの天然ガス、コンデンセートを処理し、LNGプラントへパイプライン輸送します。
* LNGプラント: ロシア初のLNGプラントで、LNG貯蔵タンクや出荷桟橋、LNG液化処理施設などを備えています。

プロジェクトの経緯

サハリン島周辺の豊富な化石燃料資源は早くから注目されており、1991年にソビエト連邦政府が鉱区の開発を国際入札にかけることを発表しました。その後、ロイヤル・ダッチ・シェル、三井物産、三菱商事がサハリン・エナジー社を設立し、ロシア政府と生産物分与協定（PSA）を締結しました。

プロジェクトは順調に進捗しましたが、環境対策の必要性から開発費用が増大し、2006年にはロシア政府から環境アセスメントの不備を指摘され、開発中止命令が出されました。しかし、その後の交渉でガスプロムが参画し、サハリン・エナジーの株式を取得することで合意。2009年には稼働式典が行われ、LNGの出荷が開始されました。

2022年、ロシアのウクライナ侵攻を受けてシェルがロシア事業からの撤退を表明。その後、プーチン大統領が運営会社の再編を決定し、新たな運営会社が発足しました。シェルの権益はガスプロムが取得し、同社の比率が上昇しました。

自然環境への影響

サハリン2プロジェクトは、その開発が環境に与える影響について、自然保護団体などから懸念の声が上がっています。鉱区周辺は流氷の接岸や高波など、気象条件が過酷であり、原油流出事故が発生した場合の環境汚染が懸念されています。また、付近の海域に生息するクジラの生息状況についても評価が行われています。

LNG Jetty建設の際には、アニワ湾内のホタテの生息への影響が懸念されモニタリングが実施されましたが、影響がないことが確認されています。

サハリン2プロジェクトは、ロシアのエネルギー供給において重要な役割を果たす一方で、環境保護との両立が求められる複雑なプロジェクトです。

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