サボ

サボとは

サボ（sabot）は、複数の意味を持つ言葉です。ここでは、その多様な意味と背景について詳しく解説します。

木靴としてのサボ

日本では、ヨーロッパの伝統的な木靴を「サボ」と呼びます。これは、柳、ブナ、クルミなどの耐水性・耐久性に優れた木材を加工して作られます。木を数ヶ月間乾燥させた後、内部をくり抜いて成形します。古代から使われてきた履物ですが、現代でもフランスのブルターニュ地方やオランダなどの農村部で、男女問わず日常的に履かれています。

サボの語源はアラビア語の「zaboto」に由来します。フランスの木靴を「サボ（sabot）」、オランダの木靴を「クロンプ（klomp）」と区別することもあります。また、甲の部分に粗い革を付けた厚底の木靴もサボと呼ばれます。サボは靴の原型の一つと考えられていますが、その起源は明確ではありません。類似の履物は日本や朝鮮半島にも見られます。

歴史的には、古代エジプトやローマでも見られ、中世ヨーロッパで広く普及しました。現在でも、フランスやオランダの民族衣装の一部として用いられています。デザインは多様で、無地のもの、黒く塗られたもの、革製のベルトが付いたものなどがあります。

装弾筒としてのサボ

フランス語で木靴を意味する「sabot」は、大口径の銃砲から小口径の弾丸を発射するための詰め物としても使われます。これは、砲弾の周りに装着する装具で、砲弾を安定させ、高速で発射するのに役立ちます。戦車砲のAPDSやAPFSDS、散弾銃のサボットスラッグなどで用いられています。

この装弾筒としてのサボの原型は、球形砲弾の時代に遡ります。初期の榴弾は、信管が正しい向きで命中しないと不発になる問題がありましたが、弾に厚い木皿のような装具を付けることで、空気抵抗により一定の向きを保つように工夫されました。この木皿が木靴に似ていたことから「サボ」と呼ばれるようになりました。その後、装弾筒は釣鐘型の長弾へと進化し、現代の砲弾の形態へと発展しました。

労働争議としてのサボタージュ

労働争議における「サボタージュ」という言葉は、労働者が意図的に労働能率を低下させる行為を指します。これは、使用者側に損失を与え、交渉を有利に進めるための手段です。「サボタージュ」の語源は、かつてフランスで労働者が木靴を使って工場機材を破壊したことに由来します。また、日本語の「サボる」という言葉もこの「サボタージュ」が語源となっています。

小型ヨットとしてのサボ

オーストラリアなどでは、小型ヨットを「Sabot (dinghy)」と呼びます。このヨットは、主に若い世代のセーラーが利用するもので、小型で扱いやすいのが特徴です。

人名としてのサボ

「サボ」は、ハンガリー系の姓「Szabó」としても使われます。この姓は、ハンガリー以外では綴りが異なる場合があります。著名な人物としては、フランス・ハンガリーの俳優・映画監督のラズロ・サボ (Szabó László)、セルビアのサッカー選手のゾルタン・サボ (Золтан Сабо, Zoltan Sabo)、フランスのサッカー選手のジャン＝フィリップ・サボ (Jean-Philippe Sabo)などが挙げられます。

その他の意味

「サボ」は、以下のような意味でも使われます。

行先標: 鉄道車両の外壁に掲出するボードのこと。サイドボードまたはサインボードの略です。鉄道車両やバスの行先表示全般を指すこともあります。
サボ川: ルーマニアにある川の名前です。
* サボ島: ソロモン諸島にある島の名前です。

架空のキャラクターとしてのサボ

「サボ」は、漫画『ONE PIECE|ONE_PIECE』の登場人物や、NHK教育番組『みいつけた!』の登場キャラクターである「サボさん」としても知られています。

このように、「サボ」は様々な分野で用いられる多義的な言葉であり、その背景には多様な歴史と文化が息づいています。

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