サン・ジョルジェ城

サン・ジョルジェ城：リスボンを見下ろす歴史の要塞

リスボンの中心部、丘の上にそびえ立つサン・ジョルジェ城（Castelo de São Jorge）は、ポルトガルの歴史を凝縮した壮麗な要塞です。観光名所として知られるこの城は、紀元前2世紀頃には既に要塞化されていたと推測されており、その歴史は古く、考古学的な調査からは、紀元前6世紀にはフェニキア人、ギリシャ人、カルタゴ人の影響を受けたケルト人とイベリア人が居住していた痕跡が確認されています。

その後、古代ローマ帝国、スエビ族、西ゴート王国、そしてムーア人と、支配者は幾度となく入れ替わりました。12世紀、レコンキスタの波が押し寄せ、ポルトゥカーレ伯アフォンソ・エンリケス（後のポルトガル初代国王アフォンソ1世）は、北ヨーロッパ貴族の支援を得て、ムーア人からリスボンとこの城を奪還しました。1147年のリスボン攻防戦では、マルティン・モニスという騎士が城門の閉鎖を自身の体で阻み、仲間の入城を確保するという伝説的な逸話も残されています。

12世紀後半にはムーア人の侵入を凌ぎ、リスボンが王国の中心地として発展すると、1255年にはサン・ジョルジェ城は王宮（アルカソヴァ城）となりました。14世紀にはディニス1世による大規模な改修が行われ、14世紀後半にはカスティーリャ軍の侵攻にも耐え抜きました。アヴィス朝の初代国王ジョアン1世は、城を聖ジョルジェに捧げました。これは、ジョアン1世の王妃フィリパがイングランド王女であり、両国で聖ジョルジェ（聖ジョージ）が人気の聖人だったことに由来します。

14世紀から16世紀初頭にかけて、城内のウリッセス塔（アルバッラ塔）は王国の公文書館として機能し、現在も国立ポルトガル公文書館は「トーレ・ド・トンボ（Torre do Tombo）」（公文書塔）と呼ばれています。年代記作者フェルナォン・ロペスやダミアォン・デ・ゴイースもここで働いていました。王宮としてのサン・ジョルジェ城は、インド航路を開拓したヴァスコ・ダ・ガマをもてなす場所でもありました。1502年には、劇作家ジル・ヴィセンテの劇がマヌエル1世の息子の誕生を祝って上演された記録も残っています。

16世紀初頭、マヌエル1世がテージョ川沿いに新しい王宮（リベイラ宮殿）を建設すると、サン・ジョルジェ城は徐々にその役割を失っていきました。1531年の地震による被害、そして1755年のリスボン地震による更なる被害を受けながらも、18世紀には貧しい子供たちの教育のための慈善団体が設立されたり、ポルトガル最初の気象台が設置されたりと、様々な用途に利用されました。

1940年代まで放置された時期もありましたが、その後大規模な修復工事が行われ、現在では、城壁に囲まれた四角形の要塞の姿をしています。かつての王宮跡、庭園、そしてリスボンを一望できる広大な広場などが残されており、1846年に造られた主要門からはアルマス広場へとつながっています。この門には、マリア2世の名とポルトガル王国の紋章が刻まれています。門の前には、アフォンソ1世のブロンズ像と古い大砲が置かれています。

城の主要部である北西側の高い要塞部分には、中世の城郭が残り、10の塔が立ち並んでいます。塔に登れば360度の大パノラマでリスボンの街並みを眺めることができます。南と東側にはバルバカ（barbacã）という楼門で守られ、北と西側は険しい崖となっています。かつては堀で囲まれていましたが、現在は干上がっています。西側には、下の丘まで続く長い城壁と、敵に城が陥落した際に脱出するための塔が備わっています。サン・ジョルジェ城は、歴史と絶景が融合した、リスボンを代表する観光スポットです。

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