ジャンダルム

ジャンダルム：北アルプスの岩峰

ジャンダルムは、飛騨山脈（北アルプス）の穂高連峰、奥穂高岳の西南西に位置する標高3,163mの岩稜です。そのドーム型の独特な形状は、多くの山岳写真家にとって魅力的な被写体となっています。

名称の由来

ジャンダルムという名前は、スイス・アルプスのアイガーにある垂直な絶壁の通称に由来します。元々はフランス語で「国家憲兵」を意味し、転じて山岳用語としては、尾根上の通行を妨げる岩を指します。奥穂高岳ジャンダルムは、奥穂高岳の前衛峰としてその名が付けられました。

地理と特徴

中部山岳国立公園内に位置し、西穂高岳と奥穂高岳を結ぶ縦走路の一部を形成しています。南北3.5km、東西1.5kmに及ぶその規模は、周囲の山々に劣らず雄大です。ジャンダルムの北側には、ロバの耳、馬ノ背といった急峻な痩せ尾根が連なっており、登山者にとって大きな難所となっています。これらの名称は、昭和になってから付けられました。

ジャンダルムは、奥穂高岳のものが最も有名ですが、剱岳チンネにも同様の前衛峰があり、同じ名前で呼ばれています。岩壁は閃緑斑岩の柱状節理で形成されています。

登山コース

ジャンダルムの頂上からは、360度の絶景を望むことができます。しかし、北側から稜線を直接登るコースは、クライミングロープが必要なほどの絶壁となっています。一般的には、南西の飛騨側から回り込む往復コースが利用されますが、岩登りの経験が豊富な熟達者向けのルートです。

信州側には巻道があり、ジャンダルムの基部を迂回（トラバース）することができます。しかし、積雪期など不安定な状態では、この迂回路が利用できない場合もあります。北側に稜線を下る場合は、クライミングロープが必須となります。

過去の出来事

2009年8月23日には、登山家の田部井淳子さんとNHKアナウンサーの内多勝康さんが、NHKの番組「金とく」の企画でジャンダルムに登頂しました。危険なルートであるため、プロの山岳ガイドがクライミングロープでサポートを行いました。この時の映像は、DVD「夏の北アルプス あぁ絶景！雲上のアドベンチャー」として発売されています。

同年9月11日には、ジャンダルムの南側すぐ近くで遭難者救助中の岐阜県防災ヘリコプターが岩壁に衝突し墜落、3名が死亡するという痛ましい事故も発生しています。

ジャンダルムは、その美しい景観と同時に、常に危険と隣り合わせの山であることを忘れてはなりません。登山に際しては、十分な準備と経験、そして慎重な判断が求められます。

参考文献

『ヤマケイ アルペンガイド7 槍・穂高連峰』山と溪谷社、47頁、ISBN 978-4-635-01351-2
『槍ヶ岳・穂高岳 上高地 2010年版（山と高原地図 37）』昭文社、ISBN 978-4-398-75717-3

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