スイカズラ

スイカズラ（吸い葛・吸葛・忍冬）

スイカズラ（学名: Lonicera japonica）は、スイカズラ科スイカズラ属に分類される常緑のつる性木本です。別名として、ニンドウ（忍冬）やキンギンカ（金銀花）の名でも知られています。日本各地の野山に自生し、古くから人々の生活と深く関わってきました。

名称の由来

和名のスイカズラは、「吸い葛」に由来します。これは、花筒の奥にある蜜を、子どもたちが管を口に含んで吸って楽しんだことにちなんでいます。砂糖が貴重だった時代には、天然の甘味料として重宝されました。また、英名のJapanese honeysuckleも、蜜を吸うことから名付けられたと言われています。

別名であるキンギンカ（金銀花）は、花の色が咲き始めの白色から徐々に黄色に変化することに由来します。また、ニンドウ（忍冬）は、冬でも葉を枯らさずに耐え忍ぶ姿から名付けられました。花言葉は「愛の絆」です。

分布と生育環境

スイカズラは、北海道南部から九州まで日本全国に分布しており、朝鮮半島や中国など東アジア一帯にも生育しています。平地から山野、土手、道端など、様々な場所で見られます。日当たりの良い場所を好みますが、日陰にも耐えることができます。欧米では観賞用として栽培されていますが、野生化して森林を覆い、生態系に影響を与えるなどの問題も発生しています。

形態と生態

スイカズラは、常緑または半常緑のつる性低木で、茎は右巻きに長く伸び、他の植物に絡みつきながら成長します。若い茎は灰赤褐色で毛が密生していますが、古くなると樹皮が剥がれて灰褐色になります。冬には、つるの先端部分だけが枯れます。

葉は対生で、卵形から楕円形、長楕円形をしており、春の若葉は縁が波打っていますが、夏には全縁になります。冬は厚みを増し、裏側に巻いた形になります。葉の裏面には毛が多く、表面には少ないのが特徴です。暖地では冬でも葉を落とさず、赤みを帯びて裏側に巻いています。

花は初夏（5～7月頃）に咲き、葉腋から2個ずつ並んで咲きます。夕方になると甘い香りを放ち、つぼみは薄紅色、咲き始めは白色、そして徐々に黄色へと変化します。花冠は筒状で、先が上下に分かれた唇形をしており、中に蜜があります。雄しべは5本、雌しべは1本で、花冠から突き出ています。

果実は液果で、10～11月頃に黒色の球形の実が2個ずつなります。若い果実は緑色ですが、熟すとつやのある黒色になります。冬になっても残るため、よく目立ちます。

利用

スイカズラは、古くから薬用や食用として利用されてきました。

薬用

花やつぼみは「金銀花」、茎葉は「忍冬」として、生薬として利用されます。金銀花は、利尿、健胃、解熱作用があるとされ、忍冬は収斂作用もあります。漢方薬にも用いられます。民間療法では、風邪や関節痛、腫れ物などに煎じて服用します。また、入浴剤としても利用され、腰痛や湿疹、あせも、痔の痛みに効果があるとされています。スイカズラの葉や茎で造られた忍冬酒は、解毒、食欲増進、冷え性、生理痛、高血圧などに良いとされています。

食用

新芽や若葉は、山菜として食用にされます。軽く茹でて水にさらし、お浸しや和え物、油炒めなどに調理します。葉を乾燥させてお茶として楽しむこともできます。花は、そのまま酢の物などに利用できます。

近縁種

スイカズラ属には約180種があり、日本には約20種が分布しています。その多くは低木ですが、つる性のものとしては、ハマニンドウやキダチニンドウなどがあります。

文化

スイカズラは、その美しい花や薬効から、古くから人々に愛されてきました。唐草模様のモチーフにも使われ、親しまれています。また、韓国の政治家、金大中氏のニックネームが「忍冬草」であったことからも、その文化的な影響が伺えます。

スイカズラは、私たちの身近な自然の中で、ひっそりと力強く生きている植物です。その可憐な姿と多様な利用法を知ることで、自然への理解を深め、より豊かな生活を送ることができるでしょう。

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