スギヒラタケ

スギヒラタケについて

スギヒラタケ（学名: Pleurocybella porrigens）はキシメジ科に属するキノコで、一般には杉平茸とも呼ばれています。かつてはその味や香りの良さから食用として重宝され、缶詰としても流通していました。しかし、2004年以降、その毒性が認識され、多くの死亡例が報告されるようになりました。

特徴と生息環境

スギヒラタケは白色の木材腐朽菌で、主に晩夏から秋にかけて針葉樹林で見られます。特にスギやアカマツの倒木や切り株の上に群生することが多いです。その傘のサイズは2から6センチメートルで、初めは円形ですが成長するにつれて耳形や半円形に変化します。成熟期には純白から淡褐色に変わりますが、柄はほとんどなく肉は薄い白色です。食用のヤキフタケと似ていますが、ヤキフタケには年輪模様が見られるため、見分けることが可能です。

スギヒラタケは主に北半球の温帯地域に分布しており、特に東北地方では伝統的に身近な食材として親しまれてきました。1990年の大嘗祭では秋田県からの献上品として選ばれたこともあります。しかし、2004年にその毒性が明らかになり食用としての利用が急速に減少しました。

栽培の試み

過去にはスギの間伐材を用いた原木栽培の研究が行われましたが、新鮮な原木では発生せず、発生に数年かかること、発生量が少ないことから商業生産には向いてないと結論されました。そのため、間伐材は放置されることが多く、腐朽菌としての役割が提案されました。また、人工培地での栽培も難しく、適切な条件が見つからない状態です。

有毒性の認識

スギヒラタケの毒性が初めて報告されたのは2004年で、この年の秋には急性脳症や死亡例が相次いで確認されました。腎機能障害を抱える患者がこのキノコを摂取した際に多くの障害が報告され、これを受けて政府は食用を控えるように警告しました。

この毒性の発見に関連して、急性脳炎を新たに全数把握対象疾患として指定した改正感染症法が影響を与えた可能性が指摘されています。本キノコが食用であったため、これまでその危険性が疑われることはありませんでした。

臨床的影響

スギヒラタケを摂取した場合、食後2日から1か月の無症状期間が続いた後、筋肉の収縮や麻痺、意識障害が現れることがあります。腎機能に問題がある患者は特に中毒症状を発症しやすく、回復には数か月かかる場合があります。現在のところ、明確な特異的治療法は存在せず、対症療法としての管理が行われています。

毒成分の特定

2004年以降、さまざまな研究が行われていますが、スギヒラタケに含まれる具体的な毒成分は長い間明らかではありませんでした。近年の研究では、複数の成分が発見されました。特に、血液脳関門を破壊することが示唆されるいくつかの成分が急性脳症の発症に関与しているとの報告があり、問題の複雑さが浮き彫りになっています。

まとめ

スギヒラタケはただのキノコではなく、その背後にある毒性や栽培の難しさ、さらには安全性に関する知識の変化を理解することが重要です。このキノコについての認知が広まり、今後の食用キノコの安全な利用に寄与することを期待します。

もう一度検索