すざく

すざく（ASTRO-EII）

すざくは日本が誇る第23号のX線天文衛星であり、正式名称はASTRO-EIIです。2005年 7月10日に内之浦宇宙空間観測所からM-Vロケット6号機によって打ち上げられたこの衛星は、NEC東芝スペースシステムの手による開発・製造によって誕生しました。すざくは約550キロ[[メートル]]の高度を持つ軌道を循環し、周期96分で地球を1日に約15周しながら、さまざまな宇宙現象の観測を行っています。名前は、宇宙の守護神として名高い伝説上の神鳥、朱雀に由来しています。

概要

すざくは、X線天文衛星「だいち（ASTRO-D）」の後継にあたる5台目の衛星です。過去に打ち上げられたASTRO-Eは、2000年2月にM-Vロケット4号機によって打ち上げられましたが、第一段ロケットの燃焼異常により、残念ながら軌道投入に失敗しました。この失敗を受けて新たに開発されたのが、すざくです。主要な観測目的には、高温プラズマの解析や、遠方銀河団の観測、そしてブラックホール候補の天体や活動銀河核の調査が含まれています。

本体は円筒形で、直径は2.1メートルです。太陽電池パネルを展開すると幅5.4メートルに達し、鏡筒を延ばすと全長は6.5メートルになります。総重量は1680キログラムで、ASTRO-Eと基本的には同じ設計ながら、運用上のリスクを軽減するために部品の変更や観測装置の改善が施されています。特に、X線分光検出器（XRS）のエネルギー分解能は倍増し、冷却用の液体ヘリウムと固体ネオンの寿命は1.5倍に延びました。

観測目的

すざくの観測目的は多岐にわたります。主な内容は次の通りです：

- 高温プラズマの特性を観測し、その解析を進めること。
- 多様なX線源におけるプラズマの動的変動を研究すること。
- 銀河内の超新星残骸からの核ガンマ線を探査すること。
- 宇宙の構造とその進化を理解するための研究。
- 銀河団の進化を追求し、遥か遠くの原始天体の探索を行うこと。
- ブラックホール候補天体と活動銀河核のスペクトルを広範囲にわたって研究すること。
- ブラックホールへの物質の降着について調査すること。
- 活動銀河核が宇宙X線背景放射にどのような役割を果たしているかを研究すること。

観測装置

すざくには、5つの軟X線望遠鏡と1つの硬X線望遠鏡が搭載されています。これらの装置はアメリカとの共同で開発され、特にX線マイクロカロリメータを利用した観測が行われています。しかし、2005年8月に冷却材の液体ヘリウムの不具合が発生したため、1台の軟X線望遠鏡は使用できなくなりました。残りの軟X線望遠鏡と硬X線望遠鏡は、広範囲かつ高エネルギーのX線を観測するために設計されています。

運用経過

衛星は打ち上げから2か月後の9月10日から試験観測を開始し、2006年4月1日には本格的な観測に移行しました。初期の設計寿命は2年でしたが、実際の運用はその期間を超え、2年2か月に及びました。その後、後期運用に転じています。

障害と運用終了

しかし、2005年8月8日にはXRSに不具合が発生し、冷却剤の液体ヘリウムが蒸発し、この装置は使用不能となる事態が起きました。これにより衛星の運用に影響が出ることとなりました。2015年 6月1日以降、電力不足のため通信が不安定となり、同年8月26日に運用の終了が発表されました。宇宙航空研究開発機構（JAXA）は、宇宙デブリ発生防止の観点から、必要な作業を進める方向で、最終的に衛星の運用を終えることを決めました。

これまでのすざくによる観測は、宇宙の成り立ちやブラックホールの探査において貴重なデータを提供しており、その成果は広く評価されています。

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