ステンレス鋼

ステンレス鋼とは

ステンレス鋼（英: stainless steel）は、鉄に一定量以上のクロムを含む合金鋼であり、主に耐食性に優れた特性を持ちます。具体的な定義では、クロムが質量比で10.5％以上含まれ、炭素は1.2％以下であることが求められます。これにより、普通鋼とは異なり、様々な環境下で錆びることが少なくなります。実用化は1910年代に始まり、それ以来、日常生活から産業使用まで広範な分野で活用されています。

ステンレス鋼の歴史

ステンレス鋼の歴史は、18世紀に元素としてのクロムが発見されたことから始まります。19世紀中に様々な基礎研究が行われ、1912年には最初のオーステナイト系ステンレス鋼の発明がなされました。その後1913年には、ハリー・ブレアリーによってマルテンサイト系ステンレス鋼が開発され、以降、産業用資材として急速に普及していきました。特に、1940年代以降の製造技術の進展により、大量生産が可能になったことがあり、世界中での需要が増加しました。

ステンレス鋼の特性

ステンレス鋼の最大の特性はその耐食性です。これは、含まれるクロムによって表面に形成される不働態皮膜という薄膜によるもので、これが金属素地を保護します。この膜は一般的な環境下で再生可能であり、傷ついても腐食を防ぐ役割を果たします。ただし、完全に万能ではなく、特定の環境下で発生する孔食や応力腐食割れ等の局所的腐食への注意が必要です。また、高温に対しても耐性が高く、耐熱鋼としても位置づけられます。

ステンレス鋼の種類

ステンレス鋼は、様々な合金元素や金属組織によって多くの種類に分類されます。主な分類としては、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系、オーステナイト・フェライト系、析出硬化系の5つが挙げられます。それぞれの鋼種は、異なる機械的特性や耐食性を有しているため、使用する目的に応じて選択することが重要です。

ステンレス鋼の製造

ステンレス鋼の製造は、まず原材料を溶解し、インゴットや薄板のような半製品に成形する工程から始まります。典型的には電気アーク炉が使用され、そこで鉄やクロムの合金を高温で溶解します。溶解後は精錬と鋳造を行い、最適な化学組成と特性を持つ材料を製造します。この過程で、再循環するスクラップを多用することでコストを削減し、資源を有効活用する取り組みも進められています。

ステンレス鋼の用途

ステンレス鋼は、日用品から工業製品に至るまで非常に多くの用途に使用されます。特に台所用品や家庭用機器では、カトラリー、鍋、流し台などが一般的です。また、建設や自動車、輸送機器においても広く利用されており、その耐食性や美観から多くの分野で重宝されています。医療分野では手術器具やインプラント材料として、また化学工業や発電所でもその特性を生かした利用が行われています。

リサイクルと生産量

ステンレス鋼はリサイクルしやすい材料であり、全体の約60%がスクラップとして再利用されています。生産量は年々増加しており、2019年には52,218,000トンが生産され、中国をはじめとする国で主に製造されています。今後もその需要は高まると考えられています。

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